2021年に入ってからも世界中で猛威を奮っているコロナウイルス。イタリアも11月から再びロックダウンを行なっており、移動制限が続いている状態です。
そんなイタリアですが、昨年の夏のバカンスシーズンには束の間の自由ともいえる、ロックダウンから開放された時期がありました。国外旅行を計画するのは容易ではないためもっぱら国内旅行が流行りましたが、私も国外へ出るのは諦めてイタリア旅行をした一人です。行き先は、今までバカンスシーズンは世界中から観光客が押し寄せるため敬遠していた地域のひとつ、北イタリア。コモ湖、ドロミティなどを車で駆け巡ってきましたが、その途中で偶然見つけて訪れたのが名前に「コロナ」がついた「Madonna della Corona(マドンナ・デッラ・コロナ)」教会です。
神がかりのような偶然が重なって訪れたマドンナ・デッラ・コロナ教会
日本人にはほとんど知られていないマドンナ・デッラ・コロナ教会(厳密にはサンクチュアリ)、私もその存在をずっと知りませんでした。コロナ大流行のこのご時世、コロナが名前についている教会があれば、日本でなら有名になったり参拝客が増えたりしそうなものですが、イタリアではコロナウイルス絡みとしては特に話題になっていないようです。私がこの教会を知った経緯は、イタリア人の友人がSNSでシェアをしたこのビデオを偶然見たからです。
こんな場所にどうやって建てたの?!と目を見張るようなインパクトのある、断崖絶壁に建てられたミステリアスな教会!イタリアにはまだこんなにすごい場所があるものだなと驚き、いつか訪れてみたいと思ったものの、このビデオを見た時期はイタリアで最初のロックダウン中の5月。どうせすぐには行けないからと教会の名前も場所も確認しませんでした。
その後、このビデオのことはすっかり忘れ去り、3ヶ月後の8月に北イタリア旅行を計画した時にも教会のことを思い出すことはありませんでした。そもそも、教会の場所を調べていなかったのでイタリアのどのあたりにあるのかすら知りませんでした。
それが、なぜか突然、北イタリアを旅行中にその映像が頭にふと浮かんだのです。それは北イタリア旅行中の4日目あたりのこと。その日はヴェローナ近郊のホテルからドロミティ方向へ車で向かっていましたが、天候がいまひとつだったため、ドロミティへ行くのはやめようかと同行者と話していた時のことでした。車中でまるでひらめきのように教会の映像を急に思い出し、「そういや、前に見たあの断崖絶壁の教会ってどこだっけ?」とビデオを見せたことのある同行者に尋ねると「覚えてない」とのこと。
すぐにスマホでそのビデオ映像を探していたところ、突然同行者が「おお!あれは何?!」というのでスマホから顔を上げると、断崖に何かが埋め込まれているような、または断崖に絵が描かれているような、そんな光景が目に飛び込んできました。
「もしや?!」と思いスマホで検索を続けると、探していたビデオの教会はヴェローナ郊外にあるということが判明。まさにそここそが3ヶ月前に見た教会そのものだったのです。
教会からの帰路でわかったことなのですが、実は通っていた道路から教会が見えるのはわずか一瞬。目を凝らして一生懸命探しても見つけるのが困難なほどでした。
もし私があのどんぴしゃのタイミングで教会のことを思い出さなければ、そして同行者がその一瞬の光景をたまたま目撃しなければ、はたまた旅行の3ヶ月前にそのビデオを見ていなければ、どれかひとつでも欠けていたらたどり着けませんでした。第六感とか霊感とか、そういう類から無縁の私ですが、この時ばかりはなにか神がかったものを感じずにはいられませんでした。しかも、その時初めて知った教会の名前が「マドンナ・デッラ・”コロナ”」!偶然とはいえ、驚きの連続で「これはもう行くしか無いでしょ」と急遽そこを訪れることにしました。
海抜774mにそびえ立つ、神秘的な雰囲気の教会
海抜774メートルの断崖絶壁の岩山にそびえるマドンナ・デッラ・コロナ教会へは、かつては下から階段で上るしか方法が無かったようですが、今では大きな駐車場から500メートル下ればたどり着けます。後から調べたところ、この駐車場までガルダ湖やヴェローナから電車とバスでも行けるようではありますが、あまり交通の便は良さそうではないので車か現地のグループツアーなどを利用するのが望ましいかと思います。
マドンナ・デッラ・コロナ教会の位置
駐車場から教会入り口近くまでは往復バスも走っていますが、往路はとりあえず徒歩で向かってみることにしました。かなり急な階段や下り坂が続きますが、途中には”Via Crucis”(ヴィア・クルチス、ラテン語で十字架の道)と呼ばれるイエス・キリストが辿った受難の道のりを表現したブロンズ像が14個置かれており、信者の中には記念撮影をしている人もいました。
この場所に13世紀には修道院があったとされ、現在の教会に完成したのは16世紀。間近で実際に見にすると、「よくこんなところに・・。こんな場所に5世紀も昔に、一体どうやってこんな大きな教会を建造したのだろう?」と、そんな風に思わずにはいられませんでした。
教会へと続く階段の下から見上げると18メートルの高さの教会は、映像で見るよりも大きく感じられ、その迫力に圧倒されます。
入場料は無料で、好きな金額の寄付ができます。内部に入るとこれまた独特の雰囲気に目を見張ります。教会の内部の奥や片側はそのまま崖の岩肌がむき出しになっているため、まさに崖に建てられた教会であることが内部を見るといっそうよく理解できます。
教会の名前となっているマドンナ・デッラ・コロナ=王冠の聖母の像も正面に掲げられています。
教会内を見学して外に出ると、パラパラと雨が降り始めたので併設されているバールで雨宿りがてら休憩したのですが、ここがとても良心的でした。イタリアでもこういった観光地のバールは観光客向け価格の場合が多いですが、ここは至って普通の価格。晴れていればテラスからアディジェ谷の渓谷の絶景も見渡せます。
アイスカプチーノを飲みながらしばらく天気の様子を見ていましが、どんどん雨は激しくなる一方。バールの人に聞けばバスのチケットは隣接のブックショップで買えるということで、復路はバスで戻ることにし、おかげで土砂降りの中を歩かずに済みました。また、復路はかなりの急坂や急階段を上ることになるので、足に自信がない人もバスを利用することをお勧めします。
日本人にはまだ知られていないイタリアの絶景、断崖絶壁にそびえ立つマドンナ・デッラ・コロナのサンクチュアリ。コロナが落ち着いてイタリア旅行が可能になったら訪れてみてはいかがでしょうか?
11月〜3月:8時〜18時
4月〜10月:7時〜19時30分
URL: https://www.madonnadellacorona.it/en/home-3/
このコラムはイタリア情報サイト「SHOP ITALIA」で掲載になったものです。
【「コロナ」という名がついた教会に行ってみたら、 色んな意味で神がかっていた!】
◆「あがるイタリア」&「SHOP ITALIA」のでコラム連載しています。過去の記事もこちらからどうぞ♪
コラム一覧はこちら→ https://shop-italia.jp/author/mako-kobayashi
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