糸やニットの国際展示会PITTI FILATI(ピッティ・フィラーティ)へ!
私の母は編み物が得意で幼い頃から母の手編みのニットをよく着ていました。店頭や雑誌で気に入ったセーターやカーディガンを見つけては母に見せて「このニットを編んで」と頼めば、ほぼ似たようなものを編んでくれました。よく毛糸屋にも一緒に行き、色んな毛糸をあれこれ見比べましたが、そんな母がこんなことをよく言っていました。
「イタリアの糸が素敵なのよ。なにより色が綺麗でおしゃれだし、この糸で編んでみたいなあって思える糸が多いのがイタリア製」と。
そんなことを昔に聞いたことをすっかり忘れていたのですが、母の言葉を久しぶりにある場所で思い出しました。その場所とは、フィレンツェで開催された「PITTI FILATI(ピッティ・フィラーティ)」という糸やニットの展示会場です。
男性ファッション見本市「PITTI UOMO(ピッティ・ウオモ)」と子供ファッション見本市「PITTI BIMBO(ピッティ・ビンボ)」に続いて同じフォルテッツァ・バッソの会場で、日本人には知る人ぞ知ると言った存在かもしれませんが「PITTI FILATI(ピッティ・フィラーティ)」という、糸やニットなどの国際展示会も毎年2回開催されます。こちらも歴史は長く今回で86回目を迎えます。
ウオモやビンボよりは規模は小さいのですが、世界中からニットメーカーやデザイナーたちが訪れ、2021年の春夏コレクションのためのニットや糸の新作発表が行われます。会場で色とりどりの美しい糸を見ていたら、ふと前述の「イタリアの糸が素敵なのよ」という母の言葉が蘇りました。
世界中を魅了するイタリア製の糸の魅力とは
私はこれまでピッティ・ウオモとピッティ・ビンボは毎年のように取材していますが、実はピッティ・フィラーティを訪れるのは初めて。そこで、数十年前からピッティ・フィラーティを訪れている京都の糸メーカーMondofil(モンドフィル)の富山貴司さんに同行し、ピッティ・フィラーティとイタリア糸の魅力について取材させて頂きました。
「糸の展示会は世界では他にもっと大きい規模のものはありますが、トップメーカーが集まり、クオリティが高く世界で一番充実しているのがピッティ・フィラーティだと思います。イタリアの糸メーカーはただ糸を展示するのではなく、糸の見せ方にとてもこだわっていてオシャレで、『このメーカーの糸を使ってみたい!』と思わせるような憧れを抱くイメージづけが得意なところが多いので、毎回訪れる度に新しい驚きがあります。イタリア人は糸をアートとして捉えている人が多いので、この会場に来ると糸を扱った仕事をしていることを誇りたい気持ちになれるんです」と富山さん。
さらに富山さんは、「イタリアの糸の魅力はなんといってもカラーリングです。イタリア人の色のセンスは素晴らしく、ぱっと目をひく色や絶妙な色の組み合わせがとても綺麗なんです。それにイタリア人たちは使いこなすのが難しい糸でも果敢に挑戦しようとします。どんな糸でも、例えば編み機にかけられないような糸も手編みをしてでもその糸を使いこなそうとするのがイタリア人で、彼らの遊び心やチャレンジ精神にはいつも感心しますし、こちらもその気持ちに応えたくなります。イタリアでは無難な売れ筋の糸にとどまらず、どんどん新しい糸が生み出されていくのにはそんな背景があるのでないかなと思います」と続けます。
世界中から注目を集めるイタリアの糸メーカーに混じって、ピッティ・フィラーティでは日本の出展者も多く見かけましたが、日本の出展者たちは昔から日本が伝統的に得意とするシルクや、着物にもよく使うラメ糸など、専門性や個性を打ち出すことで他国製品と差別化を図って世界のバイヤーたちにアピールしていました。また、和紙製の糸など他国では原料もなく作ることができないような日本独自の糸はイタリア人や他の国々の人の目を引きつけていました。
初めて訪れたピッティ・フィラーティでしたが、糸の世界でも存在感を発揮できるイタリアという国の奥深さを実感させられた展示会。素敵なイタリアの糸の世界にどっぷり浸かり、「久しぶりに母にイタリアの糸でセーターを編んでもらいたいな」。ふとそんな気持ちになりました。
この続きはSHOP ITALIAの当コラムからどうぞ!糸の世界の「あるブーム」や博物館みたいな美しいリサーチエリアについても詳しく紹介しています↓
【「PITTI FILATI(ピッティ・フィラーティ)」世界中のファッションを魅了するイタリア製の糸&ニットの展示会】
◆「あがるイタリア」&「SHOP ITALIA」のでコラム連載しています。過去の記事もこちらからどうぞ♪
コラム一覧はこちら→ https://shop-italia.jp/author/mako-kobayashi
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