宅ふぁいる便コラム「イタリア発、美食通信」第4回掲載
大容量ファイル転送サービス「宅ふぁいる便」で連載中のコラム「イタリア発、美食通信」第4回が10月4日アップされました。「連載企画」ページにて、私も好きな小説家・村山由佳さんのインタビューの下に掲載されています。
今回は「イタリアのお城でワインテイスティング体験 」
今回の内容はトスカーナ州でのワインテイスティング体験なのですが、その場所がなんと「お城」。歴史あるお城内でのワインテイスティング体験を、併設する美味しいレストランとともにご紹介しています。ワイナリーで教えてもらった「ワインテイスティングのたしなみ方」についても書いていますので、これを読むとワインテイスティングがますます楽しくなりますよ。イタリアもブドウ収穫シーズンを迎え、これからワインが美味しくなる季節です。そんな季節にピッタリの内容となっていますので、是非こちらもご覧ください。当ブログでもご紹介していない、コラム用に書いた新しい内容です。
第一回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム連載がスタート!】
第二回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第二回が掲載されました】
第三回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第3回が掲載されました】
宅ふぁいる便コラムVol.4 by小林真子
“Non si puo’ avere la botte piena e la moglie ubriaca!”
「ノン・スィ・プオ・アヴェーレ・ラ・ボッテ・ピエナ・エ・ラ・モーリエ・ウッブリアーカ!」
イタリアのお酒にまつわる諺ですが、直訳すると「ワインがいっぱい入った大きなボトルと酔っ払いの奥さんは同時に手に入らない」となります。これは、「同時に欲しい物を2つ手に入れることはできない」という意味の諺。酔っ払いの奥さんは、日本ではあまり喜ばしくない気がしますが、イタリアでは飲めない奥さんより飲める奥さんの方が好ましいということでしょうか。なんともユーモラスな諺です。私ももっぱら「イタリアの美味しい食事とダイエットの両立」に頭を悩ませていますが、これから食欲の秋、ますますこの悩みは深刻化しそうです・・。
さて、このコラムが掲載される頃は10月初旬。この時期は暑さも和らぎ、イタリアはとても過ごしやすい気候になります。暑い夏は消費も減りがちなワインですが、秋はがぜんワインを美味しく感じる季節です。郊外のワイナリーでワインテイスティングを楽しむのは、この時期おすすめのイタリアでのアクティビティになります。
イタリアに住んでいるとあちこちでワインテイスティングを楽しむ機会がありますが、9月に少し変わったワインテイスティングに参加してきました。というのも、開催場所がなんと「お城」だったのです。
トスカーナ州、フィレンツェから12キロほど離れた田舎にあるCastello del Trebbio(カステッロ・デル・トレッビオ)=トレッビオのお城。このお城は元々フィレンツェの大富豪Pazzi(パッツィ)家が所有していたもので、ミラノ出身の元貴族ファミリーが1968年に購入し、現在でもご夫婦が実際に住んでいます。オーナー一家はここで25年以上に渡りワイナリーを開き、現在はワインやオリーブオイルの生産、アグリツーリズモ、レストランを運営しています。
ワインテイスティングは、予約制でお城内の見学つき。実際に現在もご夫婦が住んでいるため、見学できる部屋はわずかですが、なんとラファエロの絵画まで飾ってあり美術館さながら。ドナテッロ作のパッツィ家の魚の紋章も掲げられ、イタリア美術好きにはたまりません。
お城見学が終わると、今度は地下のワイン貯蔵庫見学へ。おびただしい数の年季の入ったワインボトルや、大きなワイン樽がぎっしり並んでいます。オリーブオイルを置いていた部屋は、その昔、牢屋として使われていた部屋だったそうで、その名残である囚人をつなぐ鉄の輪が今も残っていました。古いお城だけに様々な歴史がありますね・・。
最後はエントランスに戻り、お楽しみのワインテイスティング。白1種、赤2種、トスカーナのスウィート・ワイン「ヴィン・サント」の4種が出されました。
イタリアのワインテイスティングの場合、カナッペのようなちょっとしたおつまみも一緒に提供されるのですが、ここのおつまみはどれも絶品。さすがレストランを併設しているだけあり、オリーブのパテはあまりに美味しくレシピを教わったくらいです。
ここではスタッフのマルタさんがとても丁寧にテイスティングの基本的な楽しみ方を教えてくれます。ワインテイスティングは数多く参加してきましたが、ここまで丁寧にテイスティングのたしなみを教えてくれるワイナリーはなかなかありません。今回のテイスティングは外国人ばかりの参加でしたので英語での説明でしたが、もちろんイタリア語で質疑応答はできます。
楽しむ前の注意点として、グラスの持ち方。グラスの足を持つように。ワインに触れるグラス部分を持ってしまうと指の温度がワインに伝わってしまうためです。
- まずは目で楽しむ。
テイスティングの始まりはグラスに注がれたワインを眺めることから。色合いを楽しみますが、赤ワインの場合、白い布をグラスの下にかざすとより色合いがわかるようになります。色合いから古いワインか新しいワインかどうかなどをチェックします。
グラスをぐるぐるっと回すとグラスにワインの水滴がつき、水滴が零れ落ちていくのが見えます。この水滴はlacrima del vino(ラクリマ・デル・ヴィーノ)=ワインの涙などと呼ばれ、ワインの涙を眺めてアルコール度数などをチェックします。
- 続いて鼻で楽しむ。
グラスの中に鼻が入るくらいグラスを近づけ、香りを楽しみます。ワインは新しいのか古いのか、酸味が強いのか、ベリー系の香りがするか、などと香りから色んなインフォメーションを得ます。
- 最後に舌で楽しむ。
テイスティングですから、ごくごくっと飲んでしまわず、舌全体にワインを行きわたらせながらゆっくり味わいます。ここで、他の人たちと一緒に「苺などベリー系の味がする」「はちみつのような甘みがある」などと意見を出し合うと「確かに、そんな味もするなあ」と新しい発見があり、いっそう楽しくなります。
最後は他の人たちとどれが美味しかったなどと個人の意見を出し合ってテイスティングは終了します。通常、テイスティングではグラスに注がれたワインを全て飲んでしまうと寄ってしまうので、味わってから吐き捨てることもあるのですが、ここでは一緒に参加していた他の外国人たち全員が4杯とも飲み干していて、これにはスタッフのマルタさんもびっくり。「どうやら皆さん当社のワインが気に入ったようですね!」と笑顔に。
イタリア語でワインテイスティングはDegustazione di Vino(デグスタツィオーネ・ディ・ヴィーノ)といいます。ワインテイスティングといっても通じますが、ワイン好きでイタリアでもワインテイスティングを楽しみたい方なら「デグスタツィオーネ」覚えておいて損はありませんよ。
イタリアのワイナリーにはレストランが併設され、ワイナリー自慢のワインを頂きながら食事を楽しむこともよくあるのですが、ここカステッロ・デル・トレッビオも然り。お城の隣にレストランがあります。この日はお城に住むオーナーご夫妻もご友人たちと夕食を楽しんでいらっしゃいました。
ワイナリーが運営するレストランでは、ウェイターはもちろんワインにとても詳しいので、食事に合ったワインを勧めてくれます。ワイナリーで生産しているオリーブオイルもレストランの楽しみのひとつ。この上質オリーブオイルをパンに垂らして食べると格別です。
日本でも同じですが、イタリアでもメニューに産地名が記載されているレストランは食材にこだわりを持っているため、美味しいレストランである可能性が高いです。ここも、料理名を読んでいるだけで思わず食べてみたくなるメニュー。このワイナリーはトスカーナだけでなく、サルデーニャ島にもワイナリーを所有しているので、メニューはトスカーナとサルデーニャの特産を生かした料理がメインでした。
●Tartare di manzo del Mugello con cuore di salsa verde e burrata all’erba cipollina e croccante di insalatine novelle
グリーンソースとチャイブ和えのブッラータチーズを詰めたムジェッロ産の牛肉のタルタルと新鮮なサラダ
●Gnocchi Sardi pasta fresca al pesto di fiori di zucca, crudo di zucchine e croccante di camone sapido di bottarga di Muggine, fresco di limoni del Giglio
カボチャの花のペースト、生ズッキーニ、カラスミをまぶした新鮮カモネ(トマト)、ジリオ島産のフレッシュ・レモンのサルデーニャ・ニョッキ
最後のデザートがまた格別。濃厚クリーミーなプリンにかかっているのは、トスカーナ名物の甘いワイン、Vin Santo(ヴィン・サント)を使ったカラメルソース。これは思わずうなってしまったほどの美味しさ。
ここではアグリツーリズモもあり、そのまま宿泊することもできます。美味しいワインと食事、ゆっくり優雅に流れるイタリア時間に身をゆだねてリラックスできる田舎での宿泊体験。もし、これからイタリア旅行をお考えでしたら、観光都市から外れて郊外ワイナリーでのワインテイスティングとお食事、アグリツーリズモを体験してみてはいかがでしょうか。お決まりの観光コースとはまた違ったイタリアを垣間見ることができますよ。
コメントを残す