宅ふぁいる便コラム「イタリア発、美食通信」第5回掲載
大容量ファイル転送サービス「宅ふぁいる便」で連載中のコラム「イタリア発、美食通信」第5回が11月22日アップされました。「連載企画」ページにて、俳優の酒井敏也さんのインタビューの下に掲載されています。
今回は「クリスマスムード溢れる、食品卸会社の試飲&試食会 」
今回の内容は、トスカーナ州にある食品・酒卸売販売会社が、取引先の飲食店関係者を招待して開いた試飲&試食会です。クリスマスを目前に控え、会場は華やかなクリスマスパッケージが彩られ、クリスマスムード溢れる雰囲気でした。イタリアのクリスマスに欠かせないデザートや、新オリーブオイルの試食、今年のワインの出来など、イタリアの美味しい物を紹介しておりますのでどうぞご覧ください。
宅ふぁいる便コラムVol.5 by小林真子
“Un bicchiere di vino al giorno toglie il medico di torno”
「ウン・ビッキエーレ・ディ・ヴィーノ・アル・ジョルノ・トリエ・イル・メディコ・ディ・トルノ」
今回のイタリアのお酒にまつわる諺は、「一日グラス一杯のワインは医者いらず」です。この諺は日本にも同じ意味の諺がありますね、「酒は百薬の長」。ワインを飲む言い訳として大変都合のいい諺ではありますが、一杯で済まないのが悩ましいところ。年末の忘年会・クリスマスシーズンに、この諺を頭の片隅に置き、飲み過ぎに注意したいものです。いやいや、イタリアのクリスマスは食事の量が半端ではないので、食べ過ぎにも注意しなくてはならないのですが・・。
さて、この原稿を書いているのは10月下旬~11月初旬なのですが、この時期はイタリアの食卓に欠かせない「ワイン」と「オリーブオイル」の出来立てホヤホヤが登場する時期です。
日本では新ワインはフランスの「ボジョレーヌーヴォー」が有名ですが、自国ワインに誇りを抱くイタリアでは隣国フランスのボジョレーヌーヴォーなど見かけませんし、ましてやボジョレーヌーヴォー解禁に日本人が狂喜乱舞することなどイタリア人は知る由もありません。イタリアでは新ワインはNovello(ノヴェッロ)と呼ばれ、ワインショップやスーパーの店頭にも並びますが、新ワインは飲み頃を迎えたワインに比べて美味しいわけではないため、「待ってました~!」というような盛り上がりはありません。ノヴェッロの特徴は、通常のワインよりもブドウジュースに近い感覚で酸味や甘味が強く、味に深みは無く軽い口当たりです。
一方、日本でいうところの「新米の季節がやってきた!」という感覚でイタリア人が毎年楽しみにしているのが「新オリーブオイル」です。イタリア語ではOlio Nuovo(オーリオ・ヌオーヴォ)といい、お皿に取ると黄金に輝く透明な液体なのですが、ボトル入りを見ると濁った濃い緑色をしているのが特徴です。日本の新米はその美味しさを存分に味わうため、シンプルに炊いただけの白米で頂くのが最高の食べ方ですが、新オリーブオイルもしかり。パンや茹でた豆に垂らして食べると新オリーブオイルそのものの味わいを楽しめます。新オリーブオイルは味がかなり濃く、舌にピリピリするような刺激もあり、この味わいは時期を過ぎたオリーブオイルにはありません。Ribollita(リボッリータ)という野菜とパンの煮込み料理はこの時期に食べられるトスカーナ州フィレンツェの郷土料理なのですが、リボッリータに新オリーブオイルを垂らして食べるのも最高に美味しい食べ方で、この時期、フィレンツェのトラットリアでは「リボッリータと新オリーブオイル」といったメニューをよく見かけます。
私もイタリアで暮らすようになってから「新オリーブオイル」が楽しみの一つになったのですが、新オリーブオイルとワインを両方テイスティングできるイベントがあり、お腹を空かせて出かけてきました。このイベントは飲料・食料品を卸販売する会社が毎年一年に一度、取引している飲食店関係者を招いて開いている試食・試飲会です。
イタリアでもクリスマスシーズンは商業的に最も大切な時期。会場には目移りするほど沢山の鮮やかにデコレーションされたクリスマスセットが並べられていました。セットの中身はおおよそ、「ワイン、パネットーネ(クリスマスの伝統お菓子)、サラミやプロシュートの肉類、パスタ、様々な瓶詰」で、イタリアの食卓の定番かつ日持ちするものがメインです。
日本のクリスマスは生クリームにイチゴの載ったデコレーションケーキが定番となっていますが、イタリアのクリスマスに食べる伝統お菓子はミラノの銘菓Panettone(パネットーネ)です。ブリオッシュ生地のまあるい大きな菓子パンといったようなもので、最もポピュラーなものはドライフルーツが入ったものですが、中にはチョコレートが入ったものなどもあります。パネットーネと同様にクリスマスの定番伝統お菓子にPandoro(パンドーロ)というものもありますが、こちらはヴェローナの銘菓で、ドライフルーツが入っておらず形が八角形で食べる前に細かい白砂糖を振りかけて食べます。
普段の食卓、クリスマスの食事などはマンマ(お母さん)がほとんど手作りするのが一般的なイタリア家庭ですが、パネットーネやパンドーロは家庭で作るのはほぼ不可能のため、こればかりは店舗で買い求めます。卸売販売店にとってもクリスマスの大事な目玉商品のため、様々なメーカーのパネットーネやパンドーロの試食がありました。
私が一番気に入っているパネットーネは、昨年のこのイベントで出会ったイタリアの蒸留酒グラッパがふんだんに使用されたパネットーネ。通常のパネットーネよりしっとり感があり、甘さ控えめでグラッパの風味がしっかり効いた大人の味。今年のイベントでも色々試食しましたが、やはり今年もグラッパ・パネットーネに落ち着きそうです。お酒好きにはたまらないスウィーツですよ。
楽しみにしていた今年の新オリーブオイルは、パンまたは茹でた豆に垂らしての試食でした。4種類の新オリーブオイルが用意され、甘味の強いもの、ピリピリした辛みが強い物など好みのオリーブオイルの味を伝えると、希望に合ったオリーブオイルを提供してくれます。
今年のトスカーナ州のオリーブオイルの出来について伺ったところ、ここ数年のうちで最も品質のいいオリーブオイルができたということ。一昨年2014年は悪天候に見舞われオリーブが稀に見る不作の年で、量、質ともにひどい出来でオリーブ農家が嘆いていたのが今もまだ記憶に新しいですが、その不幸を乗り越え昨年2015年はオリーブも復活して上々の出来、そして今年はさらに昨年を上回る最高の出来だということでした。イタリア人も太鼓判の2016年トスカーナ産オリーブオイル、要チェックですよ!
試食スペースでは、オリーブオイルの他、各種チーズ、プロシュート・サラミ類などイタリアの食卓には欠かせない食品の試食もありました。
筋金入りの食いしん坊の私は食べ物の話になるとついつい長くなってしまい、肝心のテーマ「お酒」まで遠回りしてしまいましたが、ようやく「ワイン」の話題です。
イタリアのスーパーに行くと、小さい店舗でもワインの種類の多さに圧倒されるかと思いますが、これが卸販売会社のワインとなると、この通り。
壁一面にずら~っと並んだ大量のワインボトルに興奮せずにはいられません!どれを選んでいいかわからないほど種類があるワイン棚を横目に眺めつつ、さっそくワイン試飲スペースへ。試飲会には各メーカーからも担当者が訪れ、ワインの説明もしてくれました。赤ワイン以外にもプロセッコ、グラッパなども揃い、何杯も試飲しながらワイン生産者に2016年産ワインの出来予想を聞いてみました。
「昨年2015年はブドウにとって最高の天候に恵まれ、非常にいいワインができました。昨年のワインの出来があまりに素晴らしかったので、2016年はそこまでのクオリティに到達しなかったものの、今年のワインも上々の出来になりそうですよ。」とのこと。2016年産のワインが今から楽しみですね!
ワインもオリーブオイルも上出来の2016年、来年もまた食事が楽しみなイタリアの一年になりそうです。これからもイタリアの美味しいお酒、食べてみたくなるようなお料理を日本にご紹介していきますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。一足早いですが、
“Buon Natale e Felice Anno Nuono” (ブオン・ナターレ・エ・フェリーチェ・アンノ・ヌオヴォ)=メリークリスマス & ハッピーニューイヤー
第一回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム連載がスタート!】
第二回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第二回が掲載されました】
第三回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第3回が掲載されました】
第四回連載の記事はこちらから→ 【【お城でワインテイスティング】「イタリア発、美食通信」コラム連載第4回】
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