宅ふぁいる便コラム「イタリア発、美食通信」第8回掲載
大容量ファイル転送サービス「宅ふぁいる便」で連載中のコラム「イタリア発、美食通信」第8回が8月1日アップされました。「連載企画」ページ内にある、「SAKEto(酒と)」で掲載されています。
今回は「トルコの結婚式&イタリア手作りパスタ店潜入」の2部構成
いつもイタリアの話題を書いている「イタリア発、美食通信」ですが、今回はイタリアから少し離れてトルコの話題から。イタリアは天候のいい夏が結婚式シーズンなのですが、トルコも同様のようで7月初旬にトルコ人の友人Tulin(トゥリン)の結婚披露宴パーティーに出席してきました。開催場所はイスタンブール。ボスポラス海峡クルーズ船を貸切りパーティーでした。コラムのテーマは「お酒」なのでお酒にまつわることを書く必要があるのですが、イスラム教徒の多いトルコでは、披露宴パーティで果たしてアルコール類は振る舞われるのか?続きはコラムをご覧ください!
続いての話題はイタリア料理に欠かせないパスタ料理。手作りパスタ&ニョッキ製造販売店を営んでいるご夫婦のもとで「ラビオリ包み」に挑戦してきました。日本では餃子包み、ポーランドでは餃子にそっくりな「ピロギ」包みをしたことのある私、さてイタリアのラビオリ包みはうまくできたでしょうか?
宅ふぁいる便コラムVol.8 by小林真子
Aperitivo(アペリティーヴォ)
今年のフィレンツェは6月初旬から一気に気温が上がり、少し涼しさを取り戻した時期もありましたが、7月に入りまた猛暑となっております。暑い夏は、レストランに入ってすぐに「あ~、まずはよく冷えたシュワシュワしたものを一杯!」という気持ちになりますね。では、「冷えたシュワシュワしたもの」は何と頼めばいいか?“イタリアのレストランで使えるお酒にまつわるイタリア語”の三回目はそんな時に使える「Aperitivo(アペリティーヴォ)=食前酒」です。日本ではフランス語の「Apéritif=アペリティフ」の方が浸透していますが、18世紀にイタリアのトリノから始まったもので食事前の会話を弾ませ、食欲を増進させるためのお酒という意味があります。プロセッコやスパークリングワイン、軽めのカクテル全般に使われ、このコラム連載の第三回で紹介したAperol(アペロール)というイタリアのリキュール・プロセッコ・ソーダ水を混ぜて作ったイタリアで最もポピュラーなカクテル「Spritz」(スプリッツ)もアペリティーヴォになります。レストランに入って、ウェイターから「gradisce un aperitivo?(グラディッシェ・ウン・アペリティーヴォ?=まずは、アペリティーヴォにしますか?)」と聞かれたら、「sì!(スィ!)」と答え、好みの食前酒を伝えましょう。
ところでイタリアのアペリティーヴォですが、BAR(バール)などではとてもお得なアペリティーヴォが存在します。イタリアの夕食開始時刻は日本よりもずっと遅く、午後8時半~9時開始というのが一般的。ですからイタリア人たちの間ではレストランへ出かける前にまずはバールでアペリティーヴォを楽しむというスタイルはとてもポピュラー。バールでのアペリティーヴォですが、ただお酒を飲むだけではないのです。日本でいうところの「ハッピーアワー」のような意味合いがあり、お酒(ビール、ワイン、プロセッコ、カクテルなんでもあり)を一杯注文するだけでなんとビュッフェのサービスがついてきます。もちろんバールによってビュッフェの中身や金額なども異なりますが、例えば一杯8ユーロ(2017年7月の為替レートで約1000円)のスプリッツを注文しただけで食べ放題ビュッフェが楽しめてしまいます。その内容も、サラダ、パスタ、肉や魚、野菜料理とバラエティ豊富でデザートまである場合もあり、アペリティーヴォのビュッフェだけで夕食を済ませられる場合も。日本のハッピーアワーの場合、おおよそ平日の午後5~6時帯といったような一般企業に勤務していたら不可能な時間帯が多くその恩恵にあやかるのはなかなか厳しいですが、イタリアの場合は9時頃まで続くことが多いためいつでも楽しめます。
日本のファミレスもびっくりするほどの価格設定のアペリティーヴォ、決して物価が安くないイタリアでどうして実現できるのだろうかとイタリア人の友人たちに聞いたところ「そりゃあ、普通だったら1杯で済まないから。みんな2~3杯ついつい飲んじゃうからね。」確かにアペリティーヴォのビュッフェはお酒が進むような少々味付けが濃く塩辛い物が多い。とはいえ、上手につきあえばやっぱりお得なバールのアペリティーヴォ。イタリアを訪れる機会があれば是非楽しんで頂きたい。
さて、6月~7月のイタリアは天気がいい日が続くためか結婚式シーズン。私も友人たちからお誘いを受けましたが、そのうち一つはトルコから。どうやら近隣国もこの時期は結婚式シーズンのようです。というわけで7月8日にイスタンブールでの結婚披露宴に出席してきました。披露宴パーティーはボスポラス海峡クルーズ!
「イスラム教の国であるゆえ、披露宴とはいえお酒はNGだろうか?」などと思ったのですが、船上にはお酒が並んでいました。
イスタンブール出身でアーティスト&グラフィックデザイナーの友人Tülin(トゥリン)は元々ワインもビールも飲みますし、彼女の結婚相手はポーランド人。ポーランドといえば、朝からでもウォッカを飲んでしまえるほどお酒が好きな国。お酒に対するイメージが異なるお国同士のカップルでしたが、和やかな雰囲気かつロマンチックなトルコの景色が楽しめる素晴らしいパーティーとなりました。
宗教上イスタンブールの街中でもお酒はあまり見かけないのですが、トルコにもオリジナルのお酒はあります。こちらはトルコのビールEFES(エフェス)。癖が無く、飲みやすいビール。
トルコの蒸留酒RAKI(ラク)。ブドウが原料でアニスの香りがつけられ、無色透明ですが水を入れると白濁します。イタリアのサンブーカの甘さが無くなったような味で、ギリシャのウーゾの味によく似ています。
「夏はもっぱらウェディング等パーティーへのケイタリング用と、あとはいつものレストランへの卸販売。直営店での販売はまったく売れなくなるんだよ、これは毎年同じ。ここの住民たちは夏になると暑くて火を使う料理をしなくなるみたい。」と話すのは、Claudio(クラウディオ)さん。フィレンツェ郊外のポンタッシエベという街の中心地で、生パスタの製造・販売店「Coccode’(コッコデ)」を営んでいます。店名の「Coccode’(コッコデ)」とは、日本でいう「コケコッコー」、つまり鶏の鳴き声。
1985年から続くパスタ製造・販売店を引き継ぎ、奥様のLuciana(ルチアーナ)さんと夫妻二人で毎日平均30~40キロの生パスタを製造しています。スパゲッティ各種、シエナ名産の太いパスタのピーチ、ラビオリ各種、それからジャガイモのニョッキ。街でお祭りがある時は特別レシピのラビオリを作ることもあります。フィレンツェ市内にある有名トスカーナ料理レストランへも手作りラビオリを卸しています。
クラウディオ&ルチアーナ夫妻とは知り合いが経営しているバールで仲良くなり、時々彼らのラビオリも食べていたので、「一度パスタづくりを見てみたいな~」と話したところ、「いつもでいいよ!」と快諾して頂きました。日本の皆さんに自分たちの自慢のパスタを披露するのが嬉しいとのこと。
私が見学に訪れたのは午後。午前中のうちに生地は出来上がっていたので、様々な形に仕上げる過程を見学しました。スパゲッティやタリアテッレ、フェットチーネのように加工するのはこの道具。平たく伸ばしたパスタ生地をこの道具に通すだけで、様々な幅や形に仕上がります。
こちらはラビオリを仕上げる様子。生地が少し緑色を帯びているのはホウレンソウ入りのためです。薄く伸ばした生地を台に広げます。
幅の長さを調整できる道具を使って、均等の幅に切り分けます。
夏の期間は特に生地が乾燥するため、時々霧吹きで水をかけます。
クラウディオさんが生地を切り分けている間に、ルチアーナさんは詰め物の用意。この日用意したのは、定番のリコッタチーズとホウレンソウの詰め物。リコッタはピエンツァという街から仕入れているそうです。
切り分けた生地の上にひとつずつ詰め物を絞り出します。
クラウディオさんが詰め物を絞り出している間にルチアーナさんは生地を包んでいきます。餃子を包むような要領で包みますが、さすがイタリア。包み方もなんともオシャレ。折り紙のような美しい形に仕上げていました。
包み終わった生地はpastorizzatore(パストリッザトーレ=殺菌)処理を施します。まずは機械の温度65度の場所に2分間入れます。
2分後に取り出し、続いて30度の場所で13~15分間風にさらします。防腐剤の入っていない手作り生パスタ&ラビオリですが、殺菌処理を施すことにより冷蔵庫で1週間の保存が可能になります。
リコッタとホウレンソウ入りのラビオリの殺菌処理をしている間に、次のラビオリの準備に取り掛かります。ローズマリー、パンチェッタ(ソーセージ)、卵の入ったジャガイモの詰め物入りのラビオリです。
ラビオリの中身がわかりやすいように、それぞれ詰め物によって形を変えます。こちらはシンプルな四角い形のラビオリ。
幼い頃から祖母の餃子づくりの手伝いをしてきた私。そういえば、ポーランドの友人宅でもピエロギという餃子のようなポーランド料理の生地を包む手伝いもしました。ラビオリ包みもやってみたいなあ・・という私の心情を察したのか、ルチアーナさんから「ほら、マコ!あなたも手伝いなさいよ!」とお声がかかり挑戦することに。
挑戦したのは丸い形のシンプルなラビオリ。ただ端をつまんで上下をくっつけていくだけという簡単そうなものでしたが、「え?こんなに詰め物を入れるの!?」と思うほどボリュームある詰め物だったので、中身が飛び出ないようにしながら生地の端をくっつけるのは意外に神経を使いました。出来栄えは上々、ルチアーナさんも褒めてくれました。
コッコデの販売店では調理前の生パスタや生ラビオリを購入できる他、すぐに食べられる状態をテイクアウトでオーダーすることもできます。
これからまだまだ暑さが厳しくなるフィレンツェ。火を使う調理が億劫になる夏の間は、私もコッコデのラビオリをテイクアウトしキンキンに冷えたプロセッコとともに頂く日が増えそうです。
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第一回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム連載がスタート!】
第二回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第二回が掲載されました】
第三回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第3回が掲載されました】
第四回連載の記事はこちらから→ 【【お城でワインテイスティング】「イタリア発、美食通信」コラム連載第4回】
第五回連載の記事はこちらから→ 【【クリスマスムード溢れる試飲&試食会】「イタリア発、美食通信」コラム連載第5回】
第六回連載の記事はこちらから→ 【【南イタリア・プーリア州のワイナリー】「イタリア発、美食通信」コラム連載第6回】
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