宅ふぁいる便コラム「イタリア発、美食通信」第6回掲載
大容量ファイル転送サービス「宅ふぁいる便」で連載中のコラム「イタリア発、美食通信」第6回が2月13日アップされました。「連載企画」ページ内にある、「SAKEto(酒と)」で掲載されています。
今回は「南イタリア・プーリア州にあるワイナリー 」
今回の内容は、昨年の夏に訪れた南イタリア・プーリア州にあるワイナリー。ブドウ品種プリミティーヴォの生産地Manduria(マンドゥーリア)のワイナリーではワインテイスティングがなんと無料!午前10時という時間帯にも関わらず、ついつい飲み過ぎてしまいました・・・。その他、プーリア州の伝統料理などもご紹介していますのでどうぞご覧ください。
宅ふぁいる便コラムVol.6 by小林真子
SALUTE!(サルーテ!)=乾杯!
昨年まではイタリアのお酒にまつわる諺を冒頭でご紹介してきましたが、今年は少し趣向を変えて、イタリアのレストランで使えるお酒にまつわるイタリア語をお伝えしていこうと思います。第一回は「SALUTE(サルーテ)!」。日本にあるイタリア・レストランの店名に使われることもあるため、耳にしたことがあるかもしれません。「サルーテ」とは「健康」という意味ですが、「健康を祈りましょう!」といった意味合いで、お酒の乾杯時に使われます。同様に「ALLA SALUTE(アッラ・サルーテ)」とも言います。イタリアではお水で乾杯することは縁起が悪いとされていますので、下戸の人は乾杯の時だけ少量のワインをグラスに入れて乾杯をしましょう。
「サルーテ」はクシャミをした時に相手を気遣う挨拶にも使われるので、誰かが「ハックション!」とクシャミをした後に隣の人が「サルーテ!」と声をかける会話がイタリアのバスや電車の中で時々見られます。
逆に日本語の「乾杯」ですが、実は同じ発音のイタリア語があるのをご存知でしょうか。イタリア語ではcampaiと書くのですが、発音が全く同じ「カンパイ」となります。Campare(カンパーレ)=「なんとか暮らす、生き延びる」という動詞の遠過去形(昔、昔あるところに・・というくらい大昔の動作を表す過去形)なので、イタリア語の「カンパイ」は「その昔、なんとか暮らしていたよ!生き抜いていたよ!」といった意味になります。イタリア語版「カンパイ」も、なんだかお酒の盃を交わすのにしっくりくる意味合いなのが面白く、イタリア人たちに説明すると「カンパイとはなんとも感慨深いじゃないか」とすぐに気に入られ、私の周りのイタリア人たちはサルーテの代わりに「カンパーイ、カンパーイ」と乾杯するようになってしまいました。
さて、今年最初のお酒の話題は、南イタリア・プーリア州のワイン「PRIMITIVO」=プリミティーヴォです。私の住むトスカーナ州のワインはサン・ジョベーゼというブドウの品種が使われていますが、プリミティーヴォは名前の通りプリミティーヴォというブドウの品種が使われています。昨年の夏、プリミティーヴォの生産地プーリア州のManduria(マンドゥーリア)を訪れ、思う存分テイスティングを堪能してきました。
訪れたのは、プリミティーヴォ・ワインの博物館を併設する、Produttori Vini Manduria(プロドゥットーリ・ヴィーニ・マンドゥーリア)というワイナリーです。
博物館は、その昔ワインを貯蔵していた広大な地下室を改装して作られたもので、昔のワインやオリーブの製造道具以外にも、昔のマンドゥーリアの暮らしぶりがわかる展示もあります。
博物館の見学は無料で、ワイナリー・スタッフのヴァレンティーナさんが案内してくれました。ヴァレンティーナさんは地元マンドゥーリア出身・在住で、いかにも南イタリアの女性といった褐色の肌が輝くとっても美人な女性で、男性陣たちの目をくぎ付けにさせていました。
昔のマンドゥーリアの暮らしぶりがわかる、当時の部屋の様子を再現した展示。こちらは、ベッドにマットレスもある裕福な家庭の部屋。
その隣にはベッドも木の板だけという貧しい家庭の部屋の様子。
オリーブを実と葉に分ける道具。
ワインを生産するためブドウを絞る道具。
ワインをボトルに詰める機械。
ワインのクオリティをチェックする道具類。
見ごたえのある博物館の見学が終わると、待ちに待ったプリミティーヴォのワインテイスティングです。トスカーナ州のワイナリーをはじめ、イタリアのワイナリーでのテイスティングはほぼ有料で金額に対して飲める杯数も変わってきます。しかし、このプリミティーヴォのワイナリーでは試飲は何杯でもなんと完全無料!この太っ腹ぶりには驚き、同行したフィレンツェ在住イタリア人の友人たちも「無料だなんて・・」と唖然としておりました。
午前10時という時間帯ではありましたが、無料とあらば試飲せずにはいられませんね(笑)しっかり4杯も頂いてしまいました。午前中のすきっ腹状態でワイン4杯ともなると、さすがにほろ酔いになり、少々浮かれた写真撮影をして周りのイタリア人を呆れさせることに。やはり午前中のワインテイスティングは少々危険です・・。
マンドゥーリアのプリミティーヴォはイタリア全土で手に入りますが、私はこの時初めて頂きました。100%プリミティーヴォを使用した赤ワイン3種類とNegroamaro(ネグロアマーロ)というブドウ品種100%を使用したロゼのスプマンテの合計4種を試飲しましたが、月並みな表現ですがどれもとても美味しく、スタッフのヴァレンティーナさんも「私もプリミティーヴォが大好きです」とほほ笑んでおりました。ヴァレンティーナさんのほほ笑み効果は絶大で、彼女のもとにはワインの注文が殺到!彼女にもう少しワインの話を伺いたかったのですが、近寄れないほどになってしまいました。美女効果、恐るべし。
その中で私が購入したのは、「MADRIGALE(マドリガレ)」という名前のワインなのですが、Dolce Naturale(ドルチェ・ナトゥラーレ=ナチュラル・スウィート)とエチケットで説明されている通り、自然な甘みのあるワインです。スィートワインでは、トスカーナではヴィン・サントなどがありますが、ヴィン・サントなどは干しブドウを使用するため甘いワインになるところ、マドリガレは乾燥していないプリミティーヴォを使用しているにも関わらず甘いワインに仕上がっているという、なんとも不思議なワインです。またスウィートワインでは砂糖が使用されることもありますが、マドリガレは砂糖も使われていません。くどくない甘味がなんとも美味しく、他にはなかなか無い味わいです。
プーリア州出身の友人は、ネグロアマーロ100%を使用したロゼ・スプマンテ「LEGGIADRO(レッジャドロ)」を購入。ワイナリー訪問の翌日に訪れた友人の実家のランチ会でマンマ(イタリアのお母さんという意味)のカルメーラさんの手料理とともにレッジャドロを頂くことに。
爽やかなスプマンテで、マンマの自慢の一品、プーリアの伝統料理「riso cozze e patate(ムール貝とポテトの炊き込みご飯)」との相性もばっちり。カルメーラさんは息子が帰省すると必ず、息子の大好物のこの料理を振る舞うそうです。
ムール貝とポテトの炊き込みご飯は、プーリア州の海で獲れる甘味の強いムール貝の旨みを存分に味わえる料理で、素朴で優しい味わいです。この料理を初めて口にした時、「まるで釜めしみたい!」と思ってしまいました。ムール貝のだしがお米にしみ込んだ味わいは日本の炊き込みご飯そのもの。イタリアの地でイタリア人たちとイタリア料理を食べていたにも関わらず、日本の風景が頭に浮かんできてしまったほど。
ちなみにこの友人の実家はプーリア州のTrulli(トゥルッリ)というとんがり屋根の伝統家屋でした。友人の両親は暑い夏の間は、涼しい小高い丘の上にあるセルヴァ・ディ・ファザーノ村の家で過ごすのですが、1850年頃に建てられたこの家には、立派なトゥルッリのとんがり屋根がど~んとそびえ立っていて圧倒されました。
イタリアは日本と同様、どの州に行っても、その土地ならではの郷土料理が楽しめます。イタリア全20州制覇まで残すところあと5州。美味しい料理とワインを求めてこれからもイタリア中を旅して日本へ美味しい情報をお届けします!
第一回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム連載がスタート!】
第二回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第二回が掲載されました】
第三回連載の記事はこちらから→ 【イタリア発、美食通信」コラム第3回が掲載されました】
第四回連載の記事はこちらから→ 【【お城でワインテイスティング】「イタリア発、美食通信」コラム連載第4回】
第五回連載の記事はこちらから→ 【【クリスマスムード溢れる試飲&試食会】「イタリア発、美食通信」コラム連載第5回】
きたとしかず says
プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア、 ネグロアマーロともにいいワインですよね!
下戸ですが、凝縮感があってトスカーナのワインよりプーリアのワインのほうが好きなんです。
コスパも断然良い(笑)
プーリアはオリーブやワイン、小麦の生産も確かトップクラスですよね。お料理や粉物、ワインなど食人視点だと今一番ホットな地域だと思います。
トゥルッリで生活されてる人が身近にいるなんて不思議な感じがします。
観光ものでしか知らないので・・
世界遺産で実際の生活感が感じられるっていいですね~
Mako says
きたとしかずさん、いつもコメントありがとうございます。
プーリアはPR不足でワインもオリーブオイルもトスカーナに比べると知名度が低いのが残念なところですよね。新鮮な魚介類も手に入りますし、プーリアで獲れたムール貝を生で食べたのですがとても美味しかったです。トゥルッリは今では観光なのかと思っていたら、今でも普通に使われてて私もびっくりしました。とんがり部分は天井が高~くて圧迫感がなく快適そうでした♪私もすっかりプーリアが好きになり、また時々訪れたいです(^^)