イタリアで食べる新オリーブオイルは感動もの
イタリアでしか味わえない「これぞイタリア」な食べ物。それはオリーブオイルです。そんな当たり前のもの?普通に日本でも販売されているのに?きっとそう思われるかと思います。実際に日本でもイタリア産のオリーブオイルは販売されていますし、とても美味しいものもあります。私も日本のイタリアンレストランなどで美味しいオリーブオイルを食したことも何度もあります。ですが、イタリアの11月に生産される、収穫されたばかりのオリーブを使った新鮮な「新オリーブオイル」の美味しさは格別です。しかも、その出来立てオリーブオイルをオリーブ畑の真ん中で食べると?これがもう、びっくりするくらい美味しいのです。イタリアでしか味わえない贅沢・・・今日はそんな体験についてご紹介したいと思います。
先月中旬、私の友人のChiara(キアラ)からオリーブ収穫に誘ってもらい、キアラの叔父夫婦のオリーブ畑でオリーブの収穫をしてきました。これまでにワイン用のブドウ収穫は行いましたが、オリーブ収穫は今回が初めて。キアラの叔父夫婦は、フィレンツェ郊外のMontevalchi(モンテバルキ)でアグリツーリズモ(日本ではグリーンツーリズムとも呼ばれる、農村で休暇を過ごす農村民宿のこと)を運営しており、オリーブ畑はその近くにあります。毎年この時期にオリーブ収穫がてらアグリツーリズモを楽しみに北イタリアからやってくる彼らの友人たち、それから親族、関係者ら総勢15人ほどが集まりました。
この日は11月中旬にも関わらず、暖かく太陽が燦々と輝く最高の天候。キアラたちは毎年オリーブ収穫を行っていますが、こんなに天候に恵まれたのは初めてかも、というほど。とても気持ちのいい爽やかな秋晴れの下で、オリーブ収穫を行いました。
キアラのいとこのGiulia(ジュリア)も真剣な表情そのもの。しっかり屋さんでとっても元気なジュリアはすぐに私のオリーブ収穫の師匠になり、色んな指導をしてくれました。今でもこうして手作業でオリーブ収穫を行います。利き手ではない方の手でオリーブの枝を持って固定し、利き手に熊手のようなものか、大き目のピンチのようなものを持ってオリーブの実をそぎ落としていきます。なんとも原始的な作業ですが、オリーブの実をつぶすことなくパラパラと実が落ちていきます。
ジュリアのお父さんで農園主のSauro(サウロ)さん。手がとどかない高いところは、電動式の長い大きな熊手のようなもので収穫していきます。これで収穫をすると作業は早いのですが、手作業よりもオリーブを痛めてしまうとのこと。
とってもよく働くジュリア。お父さんのお手伝いで電動熊手のバッテリーを運びます。
そぎ落とされたオリーブの実がネットの上に落ちると、今度はネットをたぐい寄せてオリーブを集めていきます。
キアラのおばあちゃんも、もう何十年もオリーブ収穫を行っています。ネットをたぐい寄せつつ、余分な葉っぱや小枝も取り除いていきます。オリーブオイルを生産する機械にかけると葉っぱや枝は弾かれるので神経質に完全に取り除く必要はないのですが、運ぶ際に重くもなるのでできる範囲で取り除いていきます。写真でわかるように、腰をかがめての作業が続くため、オリーブ収穫はかなり重労働です。
収穫されたオリーブは運びやすいようにかごに入れていき、一日の最後にトラックで運びます。
お待ちかねのランチタイム。オリーブ畑の真ん中、青空の下でみんなで一緒に食事をします。料理を担当したのはキアラの叔母さん(ジュリアのお母さん)とキアラのお母さんたち。それからサウロさんのお手製ハムやワインが振る舞われました。
ハンドメイドのラザニア。畑で火をおこしたたき火で温めてくれたので、熱くてとっても美味。イタリア料理はしょっちゅう大人数での食事会を開きますので、大皿料理が充実しています。
イタリアのランチは演出力もあります。このサウロさんお手製の巨大ハムの登場にはみんな大興奮。しかも、このハム、イノシシのお肉でできているイタリアでも珍しいもの。北イタリアから訪れていた人たちも「食べたことが無い!」と大喜びで食べていました。
サラミも自家製。ここで頂く食材はほとんどが地産地消、この地でとれるものを昔ながらの手法で調理しています。
みんながラザニアを食べている間に、キアラのお母さんがパンを炭火焼きしていました。イタリアのパンは硬いパンで、炭火で焼くとパリパリと香ばしくなります。
お待ちかねの新オリーブオイル。新オリーブオイルを一番シンプルに美味しく味わう方法は写真の通り、焼いたパンにたっぷりかけるというもの。トスカーナのパンは塩無しパンなので、最後に塩もふりかけます。シンプルを極めた食べ物なので、パンを炭火で焼いて香ばしくすることもとても大事。新オリーブオイルは緑ががって濁っていて、とろっとしています。口に入れると、ピリピリっと軽い刺激があり、ほどよい苦みがあります。パンにオリーブオイルと塩、たったそれだけなのですが、イタリアでしか味わえない味だなあ、と本当に思います。
オリーブオイル収穫を体験して学んだこと。それはやっぱりイタリア人というのは人生を楽しむのが上手で、なんともリラックスしてゆったり過ごすことが得意な人たちだということです。日本ならオリーブ収穫でも「しゃべらず働け!」となりそうなものですが、イタリアでは久しぶりの再会を楽しみ、近況報告などしあっておしゃべりしながら作業をします。みんな思い思いのペースで作業し、「この時期に収穫を終わらせなければいけないのに」というような強迫観念も全く無く、流れに身を任せつつ・・という雰囲気。それでもきちんと作業が終わるのがイタリアのすごいところ。自然に触れることが好きで、自然の旨みを生かした料理が好きで、とにかくおしゃべりが大好きなイタリア人。彼らのリラックスした雰囲気がオリーブにも伝わっているから、こんなに美味しいオリーブオイルがきっとできるのだと思います。
ちなみに、そんな中において、ひとりやっぱり日本人気質から抜け切れない私は、オリーブ収穫の楽しさについハマってしまって、一時間ほど一人で黙々と作業をしてしまい、気づいたら一人で何本も作業を終えてしまいました。それを発見したキアラからは「信じられない!いつの間にこんなに作業したの?!やっぱり日本人はよく働くのね!」と驚かれてしまいました・・・。
収穫の最後は、絶景が待っていました。信じられないほどのピンクの夕焼けがオリーブ畑を包み込み、得も言われぬ美しさ。心から「あ~、いい一日だったなあ!」と思いながら、完全に夕陽が沈むまでいつまでもピンクの夕焼けを見つめていました。
今回お邪魔した、友人キアラの叔父夫婦が営むアグリツーリズモ情報はこちら。
Podere Luisa(ポデーレ・ルイーザ)
住所: Via di Rendola 152, 52025 Montervarchi (AR)
URL: www.podereluisa.it
*英語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語ができる方&レンタカーなど車で現地までお越し頂ける方限定になりますが、ポデーレ・ルイーザでは日本人のお客様も大歓迎とのことです。素敵な家族と美しい田舎体験をしてみたい方にお勧めですよ。
武智幹夫 says
写真と文章のハーモニー、情景を思い浮かべながら読みました。
イタリアで食べるオリーブの味は、私はRIETIで味わい、今でも思い出しています。
彫刻家の友人は納豆にもオリーブをかけて食べるほどオリーブにはまっています。
Mako says
武智さん、コメントありがとうございます。
オリーブオイル、特に11月にしか味わえない新オリーブオイルの美味しさは格別ですよね。
なんと、納豆にオリーブオイルですか?!それはびっくりです。イタリアでは納豆は「高級品」なので恐れ多くてできませんが、帰国した時には試してみます!