24日未明、イタリア中部でマグニチュード6.2の地震
イタリア時間24日午前3時36分(日本時間午前10時36分)にイタリア中部で大きな地震がありました。日本でも大々的に報道されているようで、あちこちから心配の声を頂きましたが、私の住むフィレンツェのあるトスカーナ州は災害地に隣接する州ですが被害はありませんでした。皆様のお気遣いありがとうございました。
昨日は少し遠出をしていたのですが、帰りのローマ~フィレンツェ間の高速道路を走っていたところ、何台ものパトカーがローマ方面へ立て続けに向かっているのを目撃しました。イタリア全土から災害地へ救助に向かっているのを目の当たりにし、地震が現実に身近で起こったことを実感しました。
日本のニュースをチェックすると「イタリア中部」とのみ紹介している報道が多いようですが、具体的に被害が出たのは首都ローマのあるラツィオ州、ペルージャのあるウンブリア州、アドリア海に面するマルケ州の3州です。
特に被害の大きかったアマトリーチェはパスタ「アマトリチャーナ」ゆかりの地
特に被害の大きかった街のひとつにAmatrice(アマトリーチェ)があります。アマトリーチェは、ラツィオ州リエーティ県にある、人口2600人ほどの街です。
アマトリーチェは、この街の名前が由来となっているイタリアを代表するパスタ、Amatriciana(アマトリチャーナ)で有名です。アマトリチャーナは日本でもイタリア料理好きなら耳にしたことがある名前のパスタだと思いますが、グアンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)、ペコリーノ・ロマーノ(羊乳のチーズ)、トマトを使った伝統料理。私の周りのイタリア人たちもアマトリーチェで地震と聞いた途端、「あのアマトリチャーナの街だ!」とすぐに言っていたくらい名物パスタで有名な街です。現地報道によると、この名物パスタを味わいにアマトリーチェを訪れていた観光客も地震被害に巻き込まれたようです。
災害前と災害後の比較写真がイタリア各紙で報道
地震の様子が世界中のメディアで伝えられ、災害後の様子が明らかになってきました。災害前後を比べると、いかに災害の被害が大きいか生生と伝わってきます。
地震発生にみる、日本とイタリアの違い
私は元々、静岡県でテレビ報道記者をしていました。ですので、日本でも地震対策訓練などを取材し、テレビ局の地震報道のシミュレーション訓練などを行ってきました。日本では、県庁や教育機関、自治体などが定期的に地震訓練を行うなど、日ごろから地震に備えて準備をしています。特に静岡県は東海地震が来ると何年も前から言われ続けているので、地震対策への意識は非常に高く、訓練も毎年大規模に行われていました。テレビ局でもことあるごとに「防災グッズの準備など地震への対策の心づもりを」などと呼びかけるニュースを流していましたし、自治体では「災害が来たら○○に避難するように指示」などとしたマニュアルを作成しています。自治体などは地震発生を呼びかけるサイレンなどの準備も用意周到です。また、自分の過去を振り返っても、幼稚園の際にすでに防災帽子を配られ、「地震が来たらその帽子をかぶり、机の下にもぐるんだ」などと幼い頃から地震への心の準備を頭に叩き込まれていたように思います。
一方のイタリア、日本ほど地震がないので、日ごろの準備はなにもしていません。地震訓練なども存在せず、家に災害防災グッズを用意している家庭など見たことも聞いたこともありません。また自治体も、地震が来た際の避難地などを取り決めておらず、市民たちは地震が起きて初めて「どこに行けばいいんだ?」となるようです。中世の街並みが今なお残っているなど、田舎の小さな村などは耐震化からほど遠い建物がほとんどです。地震が来て初めて「地震が来てしまった、どうしよう」となります。心づもりもなにもあったものではありません。イタリア人が日本の地震被害の報道を見ると、「日本人はすごい、地震が起きてもみんな落ち着いている。私たちではどうしてもこうはいかない」と驚きます。イタリアでは地震が起きるまで何もしないので、起きた時のパニックは日本とは比較になりません。
地震大国日本、「自国の経験と知識」が他国にも役に立つのでは
イタリアで暮らしていると、日本は地震大国であるがゆえに、地震に対する経験、知識を兼ね備えていると改めて実感します。イタリア人たちもこういった大規模な地震が起きるたびに「このままではいけない。なにか対策をした方がいいのではないか」と思うようです。また、地震になると周りのイタリア人たちはきまって地震大国から来た私に意見を求めてきます。イタリアに来て比較的早い時期に覚えた単語はterremoto(テッレモート)=地震。何度も聞かれたために、すぐに覚えました。私は過去に何度も大きな地震を経験していますが、イタリア人から「日本の地震はどうなの?」と聞かれるたびに、日本人としてイタリア人に地震が起きた時の恐怖だけでなく、いつ起こるかわからない地震への心づもりや対策など伝えるべきだと思うようになりました。今また、イタリアで今回のような悲しい大地震が起きました。こういう時こそ、地震大国日本は世界に向けて自国の地震の経験や知識を伝えるべきではないでしょうか。日本の経験・知識を必要とする国は沢山存在する思います。
今回のイタリア中部地震に際し、被災地が震災から一日も早く復興しますよう心よりお祈り申し上げます。
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