都会から離れて、田舎でスローライフ
日本でも都会でサラリーマンをしていた若者が、脱サラして田舎へ移住するようになったことが話題に上ることがありますが、イタリアでも同じような状況を時々目の当たりにします。私の周りでも30代前後のイタリア人たちが、「ど」がつくほどの田舎で庭付き一軒家に住んでいます。「田舎の落ち着いてのんびりした雰囲気が好きなんだ」と皆が口を揃えて言います。街に仕事場があり、車で30分以上かけて通勤するタイプが多いようですが、今回は住まいも仕事場も田舎に構えたイタリアの若者のお話です。
トスカーナ州フィレンツェ県チェルタルド(Certaldo)はフィレンツェの街から車で1時間ほどのところにあります。ここチェルタルドで28歳のSimone Falli(シモーネ・ファッリ)さんは田舎暮らしを送っています。シモーネさんの自宅の住所はグーグル検索でも出てこない田舎で、市道を脇に入ってから自宅までの道はアスファルト舗装もままならないデコボコ道。主な目印になるような建物も周りに無く、自宅に着くまで何度も電話で確認しないとたどり着けない場所です。「配送会社もいつもここがわからなくてよく困ってるよ」とシモーネさん。そういった意味では不便だけど、地図に載っていなくて自宅が誰にも見つからないというのもなんとなく気に入っているのだそうです。
訪れたのは11月下旬、既にブドウもオリーブも収穫は済んでいましたが、とてものどかで美しい自然が広がっていました。自宅の庭には、家庭菜園もつくりました。「季節ごとに様々な野菜を収穫できるのが楽しみなんだ。」
シモーネさんはもともと街のレストランで働いていましたが、叔父のStefano Ciappi(ステファノ・チャッピ)さんが昔ながらの木製機織り機でマフラーを編むのを見て弟子入りし、一緒にマフラーを編むようになりました。自宅兼職場をチェルタルドの美しい自然に囲まれた田舎に構え、毎日マフラーを編んでいます。
昔ながらの木製機織りで丁寧に編むハンドメイド・マフラー
シモーネさんのマフラーは素材にもこだわっています。素材はすべてイタリア製の糸。肌触りを滑らかにするために使いレーヨン以外は全てナチュラルな素材です。様々なタイプの色の配合、組み合わせは叔父のステファノ・チャッピさんオリジナルで、シモーネさんも叔父さんのデザインを引き継いでいます。
まずは糸を手動で紡ぐことから始めます。様々な糸を組み合わせ、糸を紡いでいきます。
紡いだ糸を昔ながらの木製の機織りにかけます。
以前はこの大きな車輪が無かったため効率が悪かったのですが、オリジナル&お手製で製造したこの木製の大きな車輪を加えたことで、一度に多く編むことができ、効率が一段と上がりました。
叔父のステファノ・チャッピさんは、フィレンツェで人気のセレクトショップLuisa Via Roma(ルイーザ・ヴィア・ローマ)のショーウィンドウを手掛けていましたが、機織りマフラーに魅せられ昔ながらの制作方法を学び、30年に渡ってマフラー制作を続けています。そしてそんなステファノさんに弟子入りし、シモーネさんも5年前から叔父さんとともにマフラーを制作しています。
ひとつひとつすべてハンドメイドのため、一つとして全く同じものはありません。同じロットから10本ほどマフラーが作れますが、色合いは同じでもそれぞれ微妙な違いがあり、まさに世界にひとつしかないマフラーです。
基本は、白を基調としたカシミアが入った100%ナチュラル素材のデザインと、カラフルな多色使いのウール50%のデザインの2タイプです。シモーネさん本人は白を基調としたタイプのマフラーを愛用していますが、イギリス人や日本人(イタリアに観光に来ていた日本人に販売することもあるそうです)にはカラフルなタイプが人気なのだとか。
「日本にマフラーをお届けできるのが嬉しい。日本に行ってみたい。」
叔父さんのステファノ・チャッピさんは昨年、日本を旅行で訪れました。そして、「とっても日本を気に入った。またすぐにでも戻りたいよ!」という旅行話を叔父さんから聞いてシモーネさんも日本へ旅行したくてしょうがないのだそう。今回、そんな日本にマフラーを届けることができて、叔父さんともども喜んでいます。
「田舎暮らしをするようになって、すっかりライフスタイルが変わりました。今の生活がとても好きです。自分の手で生み出すことができる仕事も気に入っています。日本の皆さんにマフラーを気に入ってもらえたら嬉しいです。」とシモーネさん。そんなシモーネさんの優しいスローライフから生まれる、イタリア製マフラーStefano Ciappiは、AmicaMakoオンラインショップでご紹介を始めました。日本への販売は当店が初めてです。
【Stefano Ciappiのマフラーはこちらからご覧ください】
次回は、チェルタルドの美しい街並みを、美味しいチェルタルド名物料理とともにご紹介します。
川本智子 says
初めまして。
イタリアならではの機織りを経験してみたいと思っている時に見つけました。
シモーネさんのような工房にお邪魔しながらイタリア語を勉強したいです。
何処かご存じでしたらご紹介下さい。
Mako says
初めまして、コメントありがとうございます。残念ながら機織り職人はシモーネとステファノしか知り合いがおらず、ご紹介できる工房は存じておりません。お役に立てず申し訳ございませんが、素敵なイタリア滞在が実現されますようお祈り申し上げます 🙂