【2021年10月29日掲載になった記事です】
トスカーナ州(県庁のようなところ)から、トスカーナ州主催のプレスツアーに招待されました。トスカーナ州が世界の人に知ってもらいたいトスカーナが誇る美味しいグルメを食べ、その生産地を2泊3日で巡るという食いしん坊にはたまらないツアーです。訪問地、レストランでの食事、試食会、ホテル宿泊のすべてをトスカーナ州の職員たちがアレンジしてくれるという、いわばトスカーナ州プレゼンツの食い倒れパッケージツアー。
ツアー内容はこちら!
初日:フィレンツェ→シエナ、シエナ泊
①Buy Food Toscana(トスカーナ州主催のイベント)プレス発表会
★ランチ★トスカーナ特産品を使った料理
②シエナのレストランを会場に、「マスタークラス」(生産者の解説付きの試食会)
★ディナー★トスカーナ特産品を使った料理
二日目:シエナ→ヴォルテッラ→ボルゲリ→リヴォルノ、リヴォルノ泊
①ヴォルテッラのペコリーノ生産者を訪問
★ランチ★生産者が営むレストランでペコリーノを使った料理
②ボルゲリのオリーブオイル製造所訪問&オリーブオイルの試食
★ディナー★リヴォルノでご当地グルメ「カッチュッコ」
三日目:リヴォルノ→コロンナータ→フィレンツェ
コロンナータのラルド生産者を訪問
★ランチ★ラルドや郷土料理
プレスツアーに招待されたのは、外国籍ではフランス、スイス、ロシア、そして日本の私の4人、イタリアからはミラノ、ローマ、フィレンツェ、ナポリ、カゼルタ、ビテルボ、トーディの8人の、合計12人のジャーナリストたち。そこにトスカーナ州の職員やプレス担当者たちが入れ替わりながら加わって常に15〜18人ほどのグループでした。
それでは、気になるツアーの全貌を今回から3回に渡って紹介していきます。
初日はシエナ、プレスツアー最初のグルメはご当地グルメがふんだんに使われたランチ
初日はフィレンツェからトスカーナ州が用意してくれた送迎バスでシエナまで行き、Buy Food Toscanaのプレス発表会に参加。Buy Food Toscanaはトスカーナ州が主催でトスカーナのご当地グルメを紹介したり、生産者とバイヤーを結びつける目的で開催され今回で三回目を迎えます。
このイベントでのキーワードは「DOP」と「IGP」。「保護指定原産地表示」といった意味合いの認定証ですが、イタリアではご当地の特産品を守る目的でこのふたつのDOPとIGPという認定証があり、産地や製造法など一定の基準を守っている特産品のみに与えられます。DOPとIGPを取得するには、厳しい基準やルールを守る必要があり取得はとてもハードなので、DOPとIGPの認定を受けたということは、品質については折り紙付きということを意味します。今回のツアーにおいて何度も出てくる重要ワードなので、覚えておいてください。
Buy Food Toscana(バイ・フード・トスカーナ)
URL https://www.buyfoodtoscana.it/
ランチはシエナ市内のレストランで、翌日から生産地を巡る食材も使われていました。前菜にはコロンナータのラルドのクリームが載ったブルスケッタとペコリーノ(羊のチーズ)。
メイン料理にはトスカーナを代表する伝統料理ペポーゾ。牛肉を赤ワインで柔らかくなるまで煮込んでコショウをたっぷりきかせた料理です。イタリアでは仕事中でもランチにワインを頂くことは普通です。ここでもトスカーナ産の赤ワインをおともにペポーゾを味わいました。デザートにはシエナの郷土菓子リッチャレッリをアレンジしたセミフレッド。
最初のランチからフルスロットルで完食してしまった私。どれも美味しく大満足だったのですが、この後に怒涛の食材攻めが待ち受けているとは露知らず完食を後悔することになろうとは、まだこの時は知る由もありませんでした・・・。
Ristorante Il Sasso(リストランテ・イル・サッソ)
住所 Via dei Rossi, 2, 53100 Siena SI
URL https://www.facebook.com/pages/Ristorante-Il-Sasso/149195195696716
ランチ後に一度宿泊先のホテルへ寄り、荷物を預けがてらチェックイン。トスカーナ州が用意してくれたNHシエナはカンポ広場からも近く、観光するのにとても便利なホテルでした。
NHシエナ
住所 Via La Lizza, 1, 53100 Siena SI
URL https://www.nh-hotels.it/hotel/nh-siena
ランチの後は、生産者たちの解説つきでいただくご当地グルメの試食会「マスタークラス」
生産者たちの解説を聞きながら試食する「マスタークラス」の待ち合わせ場所はシエナの中心地カンポ広場。もう何度も訪れたことのある広場ですが、何度来ても「ああ、美しい・・」とため息がでる広場です。マスタークラスには、このクラスのみに参加するジャーナリストもいて、多人数が集まりました。グループ分けされ、それぞれマスタークラスの会場となる市内のレストランへと案内されます。
私が入ったグループは、サン・カッシャーノ・ディ・バーニ産のオリーブオイルと、シエナの郷土菓子リッチャレッリ(Ricciarelli)とパンフォルテ(Panforte)の試食会でした。
オリーブオイルの試食の方法ですが、小さい容器にオイルを入れ、まずはその容器を両手で上下を抑え手で容器をクルクル回してオイルを温めます。
それから容器に鼻を入れ、”脳に到達するまで”(すごい表現でしたが、このように言っていました)香りを鼻から吸い込み、それからオイルを口に含んで独特なキュキュっというような音を立てるようにして味わいます。
これまで数え切れないほどいろんな展示会でオリーブオイルの試食をしてきましたが、このマスタークラスで初めて「正しいオリーブオイルの試食方法」を学びました。
続いてペコリーノクリームをトスカーナパンの中に詰める、シチリアのカンノーロに見立てた一品をレストランのシェフが目の前で仕上げて提供してくれました。使われているのはトスカーナ産のペコリーノとサフランです。試食レベルではなく、完全に一品料理の量。
さらにシエナが誇る伝統菓子、リッチャレッリとパンフォルテ。この二つのお菓子はとても長い歴史を持っており、特にパンフォルテは1200年頃には既に存在していたそうです。
リッチャレッリとパンフォルテもともにIGPが認定されており、リッチャレッリはイタリアで初めてIGPに認定されたお菓子だそうです。試食会ではそれぞれIGP認定商品とそうでない工場製造の商品の食べ比べが行われました。
しかし、この頃から非常事態に。ランチを完食してしまったがゆえに、試食できる余裕が胃袋に残っていないという状況に陥り、どうしたものかと思ったところで試食会終了。他のジャーナリストたちはフィレンツェへトンボ帰りするので、送迎バスの出発時間が来てお開きとなりました。
なんとか救われたと思った矢先、このグループで唯一シエナに残った私を見たトスカーナ州の職員から「あなたはまだ時間があるのよね。それなら、私についてきて!」と、なんと別の試食会へ案内される事態に。
ここではみんなは生産者を囲んで座っており、食事をしているような雰囲気でした。この会場では、いずれもDOPやIGP認定されているパーネ・トスカーナ(トスカーナ産パン)、ムジェッロ産の栗、サフランが紹介されていました。
既に他の人たちは試食が済んだような感じだったので「話を聞くだけかな・・」と座った途端、「はい、あなたの分!」と、目の前にどーんとサフランを使ったリゾットが登場。これも、試食レベルではなく完全に一品料理の量。
さすがに手をつけないわけにはいかないので、一口リゾットを口に運ぶ。「なんてこったい、めちゃくちゃ美味しい!」食いしん坊の私は、ついついリゾットを食べ進めてしまいました。しかも、リゾットの上にあるカリカリっとしたお肉のフライのようなものが思わず「やばい」と言いそうになるほど美味しい。あまりに美味しいので隣人に何かと尋ねたら「アニメッリ(animelli)」とのこと。初めて聞く単語だったので後々調べると、シビレというウシ、ヒツジ、ブタなどの胸腺や膵臓のことでした。
さらに「これも、あなたの」と栗粉を使ったお菓子、カスタニャッチョ(castagnaccio)も並ぶ。さすがにカスタニャッチョは断念してテイクアウトにしていたところ、「締めくくりはカスタニャッチョ風アイスクリームです」とさらなるデザートが登場。アイス・・これはさすがに持ち帰れない。意を決してアイスを一口食べると・・これがまためちゃくちゃ美味しい。結局、はちきれそうなお腹をさすりながらアイスも完食してしまいました。
試食会をはしごしてしまったのはどうやら私だけで、「あはは、あなたって食いしん坊ね」などとまわりから笑われてしまったわけですが、私の胃袋事情はもはや笑えないレベル。しかも試食会が終わったのは既に午後7時をまわっており、「ではホテルに一度戻って、夕食は9時からね」と言われて夕食までたった2時間しかないことを知り撃沈。
Mugolone Ristorante(ムゴローネ・リストランテ/2軒目の試食会場でリゾットを提供したレストラン)
住所 Via dei Pellegrini, 8/12, 53100 Siena SI
URL https://www.ristorantemugolone.it/
ディナーにもどっしりした赤身の牛肉。「イタリア人よ、一日に二回もこんなお肉を食べるの?!」
案の定、一ミリもお腹が空いていない状態で夕食の待ち合わせ場所へ。夕食のレストランは試食一軒目のレストランでした。まったくお腹が空いていないのに、それでも食べ物を見るとついテンションが上がる私。もはやグルメ病だなと思っていたら、周りにはもっとツワモノたちがいました。それもそのはず、この場にいるのはフード関係のジャーナリストたち。なんと用意された赤ワインを飲むや否や「美味しくない!」と拒否して、別の赤ワインを勝手に注文してしまいました。「最初の一杯はビール」の強制にも素直に従う日本人からは信じられない光景。「君もこっちを飲みなよ、こっちのが美味しいよ〜」と私のグラスにもワインをなみなみとついでくれました。
このレストランでは、パスタ料理はお肉のソースのピーチ(うどんのように太いシエナ名物パスタ)、メイン料理には赤身を赤ワインで柔らかく煮込んだブラザートのマッシュポテト添えが出されました。
「イタリア人よ、ランチで何を食べたか覚えていないのかい?ペポーゾを食べたんですよ!一日に2回もこんなにビーフを食べるんですか?!」と唖然としながら運ばれてきたブラザートを見つめたのですが、周りは意気揚々と完食していました。ちなみに、この写真のブラザートは半分の量にお願いしてもらったものです。これで半分とは・・。
デザートも絶対なのがイタリア流。パン・コ・サンティ(Pan co’ Santi)という、シエナで10月にだけ食べるというほぼ甘さの無いお菓子と、カントゥチーニと、ヴィン・サント。
食事後、周りに隠れて一人こっそり消化促進薬を飲んだことは言うまでもありません。初日で既にこんな調子とは、明日からの2日間はどうなってしまうのだろうか・・。イタリア人たちの食へのあくなき情熱についていけるか心配になりながら初日は終わりました。
Ristorante San Desiderio(リストランテ・サン・デジデリオ)
住所 Piazza L. Bonelli, 2, 53100 Siena SI
URL http://www.ristorantesandesiderio.com/
次回のプレスツアー二日目は、ヴォルテッラのペコリーノDOPをリポートします。
このコラムはイタリア情報サイト「SHOP ITALIA」で掲載になったものです。
【トスカーナ州から招待!ご当地グルメの”食い倒れ”プレスツアーに参加しました<第一回>】
◆「あがるイタリア」&「SHOP ITALIA」のでコラム連載しています。過去の記事もこちらからどうぞ♪
コラム一覧はこちら→ https://shop-italia.jp/author/mako-kobayashi
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