フィレンツェは芸術の秋の到来です。バカンスに出かけていたフィレンツェ市民たちも街に戻ってきて、フィレンツェの街では夜や週末に様々なイベントやコンサートが開かれています。
コンサートやアートイベントはフィレンツェでは頻繁に「無料」で開かれます。無料といってもアマチュアアーティストではなく、プロのアーティストによる演奏や展覧会が、それこそ毎晩のようにどこかで開かれており、イタリアに来て最初の頃は心底驚いたものです。世界有数の観光都市なので観光客を楽しませるためなのかと最初思ったのですが、むしろこういったイベントは多くがフィレンツェ市民のために開かれています。日本でもバーなどで無料演奏(といっても、飲食代が発生します)が楽しめたりしますが、フィレンツェでは広場や教会、野外イベント会場といったありとあらゆる場所で行われ、さすがフィレンツェは芸術水準が高い街で芸術がうまく生活に溶け込んでいると感じます。
今年で1000年の誕生日を迎えているサン・ミニアート教会でも、誕生1000年を祝う様々なイベントが連日のように開かれています。
サン・ミニアート教会はミケランジェロ広場よりさらに高台に位置し、素晴らしいフィレンツェのパノラマを誇る人気観光スポット。日頃から多くの観光客が訪れています。
先日はライトアップされた教会内でジャズコンサートが開かれました。1000年の歴史を誇る厳かな教会内でジャズコンサートという組み合わせはなんともユニーク。開演1時間以上も前から訪れて席取りをする人までいたほどで、最終的には床に座ることを認められたほど多くの立ち見客が出る超満員の人気コンサートとなりました。サン・ミニアート教会では今後も誕生1000年記念を祝ったコンサートやイベントがいくつも開かれる予定です。
9月8日にはフィレンツェのシンボル、サンタマリアフィオーレ教会の大聖堂で、大聖堂付属博物館創業722年を祝うための無料コンサートが開かれました。普段は夜間入ることの出来ないサンタマリアフィオーレ教会ですが、暗闇に包まれた夜間の教会内も静けさに包まれて趣があり日中とはまた違った雰囲気を味わえます。見事なコーラスやアリアなどが教会の荘厳な大聖堂の雰囲気と相まって、普通のコンサート会場では味わえないひとときを過ごすことが出来ました。
サンタマリアフィオレーれ教会からの帰り道、大音量の音楽が聞こえてくる方向を見ると、アルノ川沿いではトリノ出身のラップ歌手Willie Peyoteのコンサートが開かれていました。野外に大掛かりなセットを設営した規模の大きいコンサートは、なんとこれも無料。普段アペリティーボなどを楽しめるアルノ川岸のスペースは大勢の観客で埋め尽くされ、コンサートは大いに盛り上がっていました。クラシック音楽の帰りにラップ音楽コンサートに出くわすというフィレンツェ。決して大きくない街ですが、コンサートのバラエティの豊かさにはいつも感心させられます。
私自身も先日は無料コンサートでゲスト出演をしてきました。イタリアで最も古い歴史を持つ老舗FMラジオ局のひとつでレギュラーパーソナリティーを務めていますが、その関係で時々こういったイベントにゲスト出演しています。今回はラジオ局の公開イベントとしてフィレンツェの地元ミュージシャンのコンサートをメインとしたイベント。会場は今年のサッカー・ワールドカップの日本対ベルギー戦のパブリックビューイングを観戦した、苦い思い出のあるオープンスペース。
こういったイベントを開く場合、日本では事前に何度も打ち合わせをしてリハーサルをして・・という段取りになるのが通常ですがイタリアではそんなことはありません。イベント内容にもよりますが、私がイタリアで参加してきたイベントはいつもぶっつけ本番です。ラジオ番組の生放送も台本もありませんし、事前打ち合わせもありません。今回のイベントも、当日会場で何をするのか初めて聞かされました。私が読む原稿などもその場で渡されるので事前準備もできません。まだ少し生真面目な日本人精神が根っこに残っている私はイベント前のわずかな時間内にブツブツ原稿読みの練習などをしましたが、3人くらいの人に「原稿はイタリア語と日本語とあるけど、イタリア語を読むんだよね?」と確認した上でイタリア語の原稿を練習したにも関わらず、舞台に上がる直前でそのうちの一人から「やっぱり日本語にしよう!そしてそれを〇〇(他のイタリア人出演者)がイタリア語に訳すって感じが面白いんじゃないかな。」と突然の思いつきにより変更。短い事前準備すら無駄になる羽目に。イタリアでは物事のほぼ全てが「improvviso(インプロッヴィーゾ)=即興、不意」なので、もうそんなもんだと思っておくしかありません。今回も「やれやれ、やっぱり・・」とあきれながらも舞台の上で即興で原稿を読みました。いつもこんな感じなのですが、それでもなんとかなってしまうのがイタリア。きっちりつくられていない感じもまた、ライブ感が出ていい味が出るものです。
フィレンツェは夜でも比較的治安もいいので、もしフィレンツェを訪れる機会があればレストランでの夕食の帰りなどに街を散策がてら無料コンサートやイベントにふらりと参加してみてはいかがでしょうか。特に教会や美術館でのコンサートなどは普通のコンサート会場では味わえない雰囲気を楽しむことが出来ますよ。
フィレンツェのイベントを英語で調べることができる情報サイトはこちら:
The Florentine http://www.theflorentine.net/events/
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