JFN系列ラジオ番組「ON THE PLANET」で話したNOVELLO(新ワイン&新オリーブオイル)事情
一昨日このブログでお伝えしたとおり、全国38局のFM局が加盟しているJFN系列のラジオ局番組「ON THE PLANET」というラジオ番組に出演しました。テーマは「イタリアのNOVELLO(新ワイン&新オリーブオイル)事情」でした。聴いてくださった方もいらっしゃいますでしょうか。今日はラジオで話した内容についてお伝えします。(※以下の内容は放送内容と全く同じではありません。ラジオ出演用に事前にまとめた原稿です。)
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フランスのボージョレ・ヌーヴォのようにイタリアでも新酒のワインってあるんですか?
あります!イタリアでは新種のワインのことはNOVELLO(ヴィーノ・ノヴェッロ)といい、ちょうどこの時期に出回り、スーパーでもワインコーナーに新ワインを並べた特設コーナーができるところもあります。
イタリア国内ではこの日は盛大に行われるのですか?
イタリアではまずシャンパン以外はフランスワインはほとんど置かれておらず、ボージョレヌーボーの存在すら知られていません。日本ではボージョレヌーボーの解禁を盛大に祝いますが、そのことをイタリア人に話すと「なんで?」と驚かれるほどイタリアでは新ワインに関してはそんなに関心が持たれていません。イタリアでは新ワインを祝う習慣は無いし、解禁日などというものも存在しませんが、11月の第1週から市場に出るようになります。
今年のヴィーノ・ノヴェッロはどんな味ですか?
そもそも新ワインに関するなにか特別な伝統がないイタリアなので、今年の新ワインの味はどうかというようなことは特に話題になりません。一般的に新ワインはフルーティーでちょっと甘みがあり、かすかにシュワッとする微炭酸を感じるものもあります。
私の友人でワイン栽培研究者のセルジオ・プッチョーニさんにイタリアの新ワインについて質問したところ、新ワインというのは他の一般的なワインとは異なった特別な製法が必要なため、多くのワイン生産者は特に伝統もないイタリアではわざわざ作る余裕があまりなく、そのため新ワインはそれほど多くないということです。具体的にはCO2で飽和した環境で飽和した環境に数日間置かれたブドウで作るのですが、この製法は熟成に適していないため通常のワインには適しません。
また、イタリアでは食べ物とワインの組み合わせがとても重要で、料理の本にも「このレシピに合うワインはこのワイン」といったそれぞれの料理にあうワインも紹介されていることもあるのですが、私が住むフィレンツェのあるトスカーナ州では新ワインに合うとされる特定の料理はなく、そもそも食事に新ワインを合わせることはほとんどありません。トスカーナでは、新ワインに合うのは「栗」とされていて、トスカーナの栗のお菓子カスタニャッチョとあわせるのが人気です。カスタニャッチョは栗の粉とオリーブオイルで作るお焼きのようなお菓子です。
それから焼き栗や湯で栗にも合わせられるのですがトスカーナでは湯で栗のことをBALLOTTE(バッロッテ)といい、トスカーナにはこんな言い回しがあります。「BALLOTTE, VIN NUOVO E SCOREGGE」(バッロッテ、ヴィン・ヌオヴォ、エ スコレッジョ」。意味は「湯で栗と新ワイン、そしてオナラ!」で、日本ではさつまいもを沢山食べるとおならをするとよく言われますが、イタリアではさつまいもが栗に変わるんです。栗と新ワインを楽しみすぎるとオナラをするよってことになるのですが、そのくらい新ワインと栗の組み合わせはトスカーナではポピュラーです。
ちなみに既にブドウの収穫は終わっているようですが、今年のワインの出来の予想はどうですか?
こちらについても先程紹介したワイン栽培研究者のセルジオさんに話を伺ったのですが、今年のトスカーナ地方のワインの出来はここ数年でとってもいいそうです!トスカーナのワインでよく使われるサンジョベーゼ種は9月の初めの暑さと干ばつのために例年より収穫が遅くなりましたが、その後は雨も降り、ブドウは順調に育ち常に健康状態でした。そのため、今年収穫されたブドウはとても素晴らしい品質で最高品質のワインができる予感がしているそうです。ワインというのは熟成に時間がかかるため、今すぐ今年の出来が最高ということはわかりませんが、ブドウの出来が素晴らしかったため、最高のヴィンテージワインになりそうだということです。今から2019のワインがとても楽しみですね!
ワイン以外にもイタリアならでわの新物があるんですよね?
イタリア料理に欠かせないオリーブオイルです。この時期しか食べられない新物です。日本の新米のような感覚で、時間が経過すれば普通のオリーブオイルになるのですが、搾りたてのこの時期のオリーブオイルは新オリーブオイル、olio nuovo(オーリオ・ヌオーヴォ)やワインと同じでnovello(ノヴェッロ)と呼ばれて新ワインと同時期に店頭に並ぶようになります。
ちなみにイタリアでもお米はリゾットなどでよく食べられ、沢山種類もあるのですが、新米という概念はありません。そもそも調理法が日本のお米の炊き方と全く違うため、新米でもそうでなくても大して変わらないからですが、イタリア人には日本では新米を、イタリアの新オリーブオイルのようにその時期だけ楽しむ文化があることを伝えると驚かれます。
新オリーブオイルはやはり味も違うんですか?
全然違います。そもそも見た目からして色が違います。通常のオリーブオイルは黄金がかった黄色い液体ですが、新オリーブオイルはグリーンです。そして舌に刺激を感じるほどピリッとした辛さがあります。通常のオリーブオイルよりかなり風味が強いため、料理にはあまり向いておらず、最もポピュラーな食べ方はこんがりトーストしたパンにオイルを垂らしてオイルそのものの味をしっかり楽しむ食べ方です。時間が経過すれば普通のオリーブオイルのようになるため、搾りたて・出来たてのこの時期しか味わえません。ですから、もし11月にイタリアを旅行する機会がある場合は是非この時期しか堪能できない新オイルを楽しんでもらいたいです。
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◆来月12月19日(木)の深夜1時10分〜(実際には12月20日金の午前1時10分〜)にも同番組に出演することになりました。内容は「イタリアのクリスマスについて」です。こちらもどうぞお楽しみに♪
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