この時期、フィレンツェのお菓子屋やスーパーの店頭で目にするようになるのが、トスカーナの伝統菓子「Schiacciata con l’uva(スキアッチャータ・コン・ルーヴァ)=ブドウのスキアッチャータ」。まさに今、収穫時期を迎えているブドウを使ったこのお菓子は、トスカーナの伝統菓子でトスカーナの人達の大好物です。
このお菓子は日本人にとっては少々驚きのお菓子かもしれません。というのも、食べると「ジャリッ」というような食感がするのです。この「ジャリッ」の正体は「ブドウの種」。日本人なら種無しブドウを使うか、または種を取り出して調理するところですが、トスカーナでは種もそのまま使います。このため、食べる度に小さな種の粒の「ジャリッ」という歯ごたえが。最初は少々驚きますが、食が進むにつれ、この食感がなんともいいアクセントになり、これ無しでは味気ないかも・・と思えてくるほど。
先日、レギュラー出演しているフィレンツェのFMラジオ局でもブドウのスキアッチャータの話題になり、他の出演者から「種ありと種無しのどちらのスキアッチャータが好き?」と聞かれ、「種あり!」と答えると「わかってるじゃないか!」とニヤリと笑われました。やはり地元の人の間では昔ながらの「種あり」に軍配が上がります。
そういえばイタリアには日本人ウケしないお菓子がけっこうあります。もちろん、イタリアにも日本と同じようなふわっとした食感やしっとりした食感のケーキなどもありますが、イタリアには日本人にはあまり好まれないごわごわっ&ぼそっとした舌触りやどっしりした重い食感のお菓子も多いです。例えば、イタリアの定番お菓子のクロスタータ(タルト生地にジャムを載せたお菓子)は、生地がどっしり重くて舌触りがごわっとして、ジャムもボテッとしており日本ではまず人気の出ないであろうお菓子。日本人にとって洋菓子は「ふわっ」「クリーミー」「口溶けなめらか」「しっとり柔らか」といった食感のものが美味しい洋菓子の要素で人気のデザートのタイプですが、イタリア人はこの要素にこだわっていません。パンも然りで、日本人好みの「しっとりふんわり」系のパンはイタリアでは少数派で伝統レストランにはまず出てきません。イタリアと日本、食の好みは似ているようで、けっこう違ったりもするのが面白いところ。イタリア旅行をする際は、できればこのブドウのスキアッチャータや、日本では食べられないようなごわっとした舌触り&どっしりした食感のデザートにも挑戦してみてはいかがでしょうか。
そんなわけで、周りからは「イタリアでもそういうのは食べられるのじゃないの?」と意外に思われるのですが、帰国すると無性に食べたくなるのが日本の洋菓子。ふわっふわの生地のショートケーキやとろけるなめらかプリンなどは帰国の際のお楽しみだったりするわけです。
KEI says
ぶどう、種ごと皮ごと食べていて、小さい頃から叱られっぱなし。面倒くさいからなんですが、口から出す事に抵抗あってね。ぶどうだあいすき!スキアッチャータ?食べたいです。日本にこないかなあ!
Mako says
KEIさん、コメントありがとうございます。日本では「種ごと皮ごと食べていて、小さい頃から叱られっぱなし」となってしまいますので、種も皮もそのままのこのスウィーツは日本で販売したらクレームが来てしまいそうです・・・。スキアッチャータとはイタリア語でつぶされたという意味で平たいパンのことで、色んなタイプがありますよ。