イタリアには「こどもの日」はありません。
今日5月5日は日本では「こども日」の祝日ですね。そこで、今回はイタリアと日本の「こども事情」について考えてみます。
先日、近所のレストランへ出かけた時、そこのお庭でとってもキュートな男の子に出会いました。それが上のサングラスをかけた男の子。くりっくりの巻き毛の金髪に、愛らしいぷっくりほっぺとまあるいお腹、満面の笑みで常にご機嫌で走り回っていて、かわいいのなんの。「ウフィッツィ美術館に飾ってある絵画などで描かれている天使そのもの!」と思ったら、他にいたイタリア人たちも全く同じ意見「あの子、天使の絵画のモデルみたいね~。」と言っていたので、日本とイタリア、同じような表現をするもんだなあと感慨深く思いました。さて、この天使ちゃんの親はどんな親かと思ったら・・意外にガテン系のムキムキのイタリア人パパでした。人見知りをしない子供で私のところへもニコニコと近寄ってきたので、ガテン系のパパともお話しすることになったのですが、パパの子供に対するデレデレっぷりといったらもう!「かわいいだろ!顔は全部母親譲りなんだよなあ。」と言い、私が輝く金髪を褒めたら「これは俺!俺譲りなんだよ~」とさらに上機嫌に。パパは超短髪なので金髪&巻き毛かどうかは不明でしたが。「写真撮ってくれよ~」と私に頼み、愛息子にメガネをかけさせたりサングラスをかけさせたり。子供も嫌な顔せずされるがまま、なんとも微笑ましい親子で、周りのイタリア人たちも目を細めて子供を見ていました。子供がいるとその場が明るくなるのは世界共通です。
ところで、イタリアには日本と同様、「父の日」「母の日」「女性の日(日本ではひな祭り)」などはありますが、男の子を祝う祝日はありません。
イタリアは日本並に出生率の低い国
日本は毎日のように「出生率」の問題が話題になっているのでその低さについては周知のとおりですが、実は意外にもイタリアも日本並みに出生率の低い国です。先進国では、日本、イタリア、ドイツが死亡率が出生率を上回り、人口減少傾向にあります。
「アモーレ(愛)の国」などと世界中から言われ、ナンパなイメージもあるイタリア。そんなイタリアは意外にも出生率が日本並に低く、また日本並に長生き大国でもあるので、少子高齢化問題を日本と同じように抱えています。日本とイタリア、出生率/死亡率の視点においては似た者同士です。
婚姻率は日本以下のイタリア
さらに意外なのは婚姻率。日本も結婚しない人が増えていますが、イタリアはさらに上をいっています。結婚しない人も多いイタリアは、また先進国の中でも最も離婚率の低い国でもあります。イタリアの離婚率は0.9%、離婚大国アメリカ合衆国の2.8%の3分の1、日本1.8%の半分程度です。(※いずれも1000人当たりの単位)
実際にイタリアで暮らしているとどう感じるか
グラフの数字ばかりを見ると、イタリアはお年寄りだらけなのか、一人暮らしだらけなのだろうかと思えますが、そんな風には感じません。イタリアといっても、もともとはいくつもの国に分かれていたため、北部と南部とでは状況が全く違ってきます。私が住む中部イタリアのフィレンツェ限定での意見になりますが、私の周りは子供を持つカップルもそれなりにいます。ただ、確かに結婚をしないカップルはとても多く感じます。結婚という形はとらず、子供は持つというのはイタリアでは一般的になっています。その理由を聞くと、「式を挙げるお金が無い」「結婚式自体に興味が無い」「キリスト教の信者でもないし、宗教的な結婚式には興味が無い」など。
特にイタリア南部は結婚式を豪華に行うことが主流。そのため、結婚式に莫大な費用がかかり、そんなお金が無いから結婚式を挙げられないという意見をちらほら知人から聞いたことがあります。
キリスト教信仰に熱心な国のようなイメージもありますが、これもイタリアの地域によって異なってきます。南部と比べ中部・北部イタリアは宗教心が薄い人が多く、私の周りのイタリア人の友人たちも宗教に熱心な人はほとんどいません。街を歩く修道士や修道女もアジア系やアフリカ系など外国人の姿が目立つくらいです。宗教心の薄れから、宗教的な教会での結婚式を挙げる必要性も感じないという人も多いようです。ちなみに、キリスト教徒ではなく結婚する人たちは、市長などの立ち合いの元、役所で結婚式を挙げます。
ところで日本でも結婚式はせずに籍だけ入れるという風潮は増えているようですが、イタリアでは結婚式=入籍なので、入籍だけをするということは起こり得ません。ですから、上記は結婚式を挙げることについて書きましたが、すなわち入籍することと同じです。イタリアは夫婦別姓なので、結婚後も女性は苗字を変えないため、そもそも籍を入れる有無も日本ほど意味をなさないのかもしれません。
事実婚は当たり前になっているイタリア
また、結婚という形をとらず、子供を持つカップルは「当たり前」という風潮になっているため、特にそのことで問題になったりもしません。イタリア人に「日本では結婚している人にはご主人や奥さんって呼ぶけど、結婚していないカップルはどう呼べばいいのか?」という質問をしたことがあるのですが、「compagna(コンパーニャ=同伴者)と呼べるけど、それはあまりいい響きではないから、やっぱり結婚していなくてもmarito(マリート=ご主人)やmoglie(モーリエ=奥さん)って呼ぶことが多い」と回答していました。日本で言うところの「事実婚」がイタリアでは結婚と同様になっているようです。
フィレンツェでは結婚という形式に縛られずに子供を持つカップルも多く、婚姻率は低いものの子供は思ったより多く感じますが、ミラノなど北部イタリアになると、日本と同様に仕事漬けのイタリア人も多く、出生率はとても低いようです。イタリア全体のことについては、またしっかり勉強してから書いてみたいと思います。
さて、私の周りのイタリア人の友人たちの中で、結婚をせず数か月以内に出産を迎えるというカップルが3組います。どのカップルも既に長く一緒に暮らしているので、子供ができたところで生活は何も変わらないし、これを機会に結婚式を挙げるというカップルもいません。「できちゃった婚」などという言葉は永遠にフィレンツェでは生まれないでしょう。(※以上、あくまでフィレンツェの話で、いまだに伝統的・宗教的な要素が濃い南イタリアでは、相変わらず結婚前に子供ができるのは良しとされない風潮があります。)
様々な意見があるとは思いますが、日本のようになんでもきっちりけじめをつけないと気が済まない風潮「結婚をしないと子供を産んではダメだ」とか、「子供が生まれたら結婚しなければならない」とか、フィレンツェで暮らしているとそんなことにこだわらなくてもいいんじゃないかなあ・・などと、私の周りの幸せそうな事実婚イタリア人カップルたちを見ていると、そう思うのでした。
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