在イタリア日本大使館はローマ、領事館はミラノにあり、フィレンツェには何もありません。そのため、年に二回、日本大使館はフィレンツェ出張サービスを行ってくれます。この出張サービスではパスポートの更新などの手続きができます。先月、この出張サービスが行われたので、在外選挙手続きをしてきました。その時、パスポートを持参したのですが、ここでふと、パスポートにまつわる話を思い出しました。
日本人である私たちは普段、他国のパスポートのことなど考えたことがないと思います。そして日本のパスポートが「常識」だと思いがちではないでしょうか。ビザ無しで外国へ観光旅行に行けるのは当たり前。それが当たり前なので、そのことに感謝をする気持ちは芽生えようがないと思います。ですが、日本の常識は世界の非常識。外国で暮らしていると、日本では見えなかった「日本って、すごい国」と実感することが多々あります。
先日、イタリア人の友人Aさんから、こんな話を聞きました。
Aさんは、知人のアルバニア人から「イギリスの観光ビザを取りたいから手伝ってほしい。英語がわからない。」とお願いされたそうです。Aさんはロンドン滞在経験があり、英語ができます。そこでAさんはイギリスの観光ビザの取得方法をインターネットで調べ、必要書類を揃え、英語のできない知人のアルバニア人に代わって必要事項も全て記入しました。そして、ビザ申請に必要な約100ユーロを添えてイギリス大使館へ観光ビザ取得申請をしたそうです。
ところが、イギリス大使館からの回答は「認められない。」というものでした。その理由が「申請者のアルバニア人が現在、無職であるから。」とのこと。職業証明書を出せというのです。Aさんは観光ビザ申請に必要な書類をもう一度くまなく調べましたが、「職業証明」なんてどこにも書いていなかったそうです。もちろん100ユーロも返金されません。
Aさんは「①職業証明が必要なら最初から書いておくべき。②そもそも観光に行くのに無職だとNGとは、差別も甚だしい。」とイギリス大使館へ抗議文を送ったそうですが、「認められない&100ユーロも返金しない。」という状況は結局覆ることはなく、そのアルバニア人はイギリスへ行くことができませんでした。
まず、日本のパスポートなら、イギリスへ観光で行くのに滞在が6か月以内の場合はビザは必要ありません。何の申請もなく、パスポートのみでイギリスへ行けます。
そして「無職だとNG」という結論を出したイギリス大使館は、このアルバニア人は不法就労の恐れがある、と判断したからです。アルバニアは移民の多い国で、イタリアにも沢山のアルバニア人移民がいます。国自体の信用度が低いため、こうした結果になったわけです。
私はこれまでに約30か国海外旅行をしていますが、ビザが必要だったのはカンボジアとインドのみ(現在カンボジアは30日以内の滞在ならビザは不要になっています)。カンボジアは専業主婦の母と取得しましたが、母の職業の有無など関係なくすぐにビザの取得ができました。
イギリスの観光ビザ取得申請をしたこのアルバニア人の方は、その目的が本当に観光だけだったのかはわかりません。イギリス大使館の想像通り、移民&就労目的だったのかもしれません。ですが理由はともあれ、国籍がアルバニアという理由でパスポート差別された、という事実は変わりません。
movehubという英語サイトによると、日本のパスポートはビザ無しで渡航ができる国の数が170か国で、世界ランク第4位のようです。以下、上位5位までの国々はこちらの通り。
1位:フィンランド、スウェーデン、イギリス(173カ国)
2位:デンマーク、ドイツ、ルクセンブルグ、アメリカ合衆国(172カ国)
3位:ベルギー、イタリア、オランダ(171カ国)
4位:カナダ、フランス、アイルランド、日本、ノルウェー、ポルトガル、スペイン(170カ国)
5位:オーストリア、ニュージーランド、スイス(168カ国)
逆にワースト5位は以下の通り。
1位:アフガニスタン(28カ国)
2位:イラク(31カ国)
3位:パキスタン、ソマリア(32カ国)
4位:エリトリア(36カ国)
5位:ネパール(37カ国)
イギリスから観光ビザが下りなかったアルバニアはというと、45位の88か国でした。このランクでこれだけ大変だというと、それ以下の国が観光ビザを取るのはどれだけ大変か想像に難くありません。最下位のアフガニスタンはわずか28か国、生まれながらに鎖国状態を余儀なくされるような国です。
「無職の人は我が国に来ないでくれ。観光ビザは渡さない。」と外国から言われたらどんな気がしますか?そんな差別を受けることがほぼない日本という国に生まれたことをありがたいと思います。
私たちは生まれる国を選ぶことはできません。パスポートの威力の観点から見ると「日本に生まれた」ということは既にかなり幸運なわけです。これまで過去において日本人の諸先輩方が世界的に信用されるような行動をしてくれたおかげです。海外へ出たくても自由に出ることができない国民がいるという事実を考えると、「日本のパスポートを持っている」ということは、それだけで世界中へ出かけていけるアドバンテージを持っているということです。せっかくのこのチャンスを生かさない手はありません。日本のパスポートに感謝しつつ、もっと海外へ出てみませんか。
余談)ふと気づいたのですが・・・なんと日本の順位はイタリアのひとつ下!イタリアという国は、空港の入国審査をしないこともあるくらい(冗談ではなく本当に。そのせいで、私のパスポートにはイタリアに入国したというハンコがありません。 )大雑把な国・・・。こんなテキトウなイタリア(失礼・・・)に負けているなんて~!!!ますますイタリアという国が不思議な国に思えてなりません。なんともつかみどころのないこの国にこれからも注目していきたいと思います。
スザンヌ says
自分はヨーロッパ人だけど、あなたみたいな優秀な日本人はだんだん日本から出て行った方が良い。まだ若いういに。
Mako says
スザンヌさん、コメントありがとうございます。日本語がとても上手ですね。漢字も完璧ですし、沢山勉強されたのでしょうね。私は幼い頃から海外に興味があり、若い頃から海外へ何度も出かけてきました。海外で暮らしていると、日本の良し悪しがよく見えるようになります。このブログでは日本にいるだけでは気づけなかったことなども書いていこうと思っています。これからも色々コメントを頂けたら嬉しいです。