北イタリア・ピエモンテ州の街、イブレアへ
ヴァッレ・ダオスタのすぐ下に隣接するピエモンテ州は冬季オリンピックの開催地となったトリノのある州で、スローフード発祥の州で美食の州として有名です。イタリアの最高級ワインbarolo(バッローロ)、ヘーゼルナッツなどナッツ類ペースト入りのチョコレートgianduja(ジャンドゥーヤ)など、美味しいものが沢山あります。
今回訪れたのはヴァッレ・ダオスタとの州境に近い、ピエモンテ州のIvrea(イヴレア)という、人口約24,000人の街です。ここもまた、暖冬のせいか雪はなく、雨が降りました。
メイン広場は、Piazza Ferruccio Nazionale で広場奥にある美しい建物は市庁舎です。この街は2月に開催される、「La battaglia delle arance=オレンジ戦争」と呼ばれる、市民がオレンジ投げをするイベントで有名です。
いつか2月に訪れて参加してみたいものですが、私が訪れた1月3日はこんな熱いイベントが繰り広げられるとはとても思えないひっそり静かな雰囲気のある街でした。
イヴレアは、イタリアを代表する歴史的な会社Olivetti(オリベッティ)が創業した街としても有名です。オリベッティは、タイプライターの製造・販売会社として創業して成功をおさめました。イタリアという国にあまりテクノロジーのイメージは無いかもしれませんが、オリベッティでは計算機やコンピューターの開発も行っていました。
Il Castello di Ivrea(イヴレア城)は、夏季(5月~10月半ば)の日曜日の15時~18時半のみ見学可能です。
イヴレアのドゥオモ広場にあるSanta Maria Assunta(サンタ・マリア・アッスンタ)。外観はシンプルですが中は圧巻。
日本でも人気のバーニャ・カウダはピエモンテ州の郷土料理
数々の美味しい食べ物があるピエモンテ州で忘れてはいけない郷土料理のひとつがBagna càuda(バーニャ・カウダ)。日本でもお馴染みの人気のあるイタリア料理です。Bagna càudaはピエモンテの方言で、バーニャ=ソース、カウダ=熱い、を意味します。その昔、貧しかった農民が数少ない限られた食材を使ってなんとか美味しいものを作りたいと、オリーブオイル、ニンニク、アンチョビだけを使って生みだしたのがこの料理だそうです。
実はバーニャ・カウダ、イタリア全土ではそんなに有名ではありません。ピエモンテ以外ではバーニャ・カウダを出すトラットリアはほとんどありません。私の周りでもフィレンツェ出身の友人たちの多くが「バーニャ・カウダを食べたことが無い」と言います。むしろバーニャ・カウダは日本の方がポピュラーな料理だとフィレンツェに滞在していると感るくらいです。
私は日本にいた時から、バーニャ・カウダが大好きで、レストランなどで食べたり、自宅でインターネットでレシピを調べて作ったりしていました。ですから、本場のバーニャ・カウダはどんなものかとても楽しみでした。
バーニャ・カウダの前に、coccoli con lardo fuso(コッコリとよばれる揚げパン、とろけたラード載せ)と食前酒がサービスで出されました。ヴァッレ・ダオスタでもとろけたラードが出てきましたが、北イタリアのラードはくせがなくてとても美味しいです。
バーニャカウダは陶器の専門の器で出てきます。日本の旅館の食事などで出てくる小鍋料理に似ていますね、ろうそくで温めながら頂くところもそっくりです。付け合わせの野菜は、キャベツ、ニンジン、カルチョーフィ(アーティチョーク)、フィノッキオ(ういきょう)、マッシュルームなど。すべて調理されていない生の状態でした。
生野菜を温かいソースにつけて頂くというシンプルな料理。バーニャカウダのオリジナルは生クリーム無しだそうですが、こちらでは生クリーム入りのバーニャカウダでした。この生クリーム入りもポピュラーで、個人的にはこちらの方がクリーミーで好みの味です。さて、本場のバーニャ・カウダの味は・・・というと、やっぱりとても美味しいです。ですが、材料がシンプルなだけに、日本で食べていたバーニャ・カウダと正直言って大差無しでした。どこで食べても美味しいバーニャ・カウダ。
この料理を食べて、なぜ北イタリア以外のイタリアよりも日本の方がバーニャ・カウダは有名で好まれるのか、わかった気がしました。勝手な推測ですが、日本の食文化にとても似ている料理だからだと思うのです。イタリア料理といえばこれまでこのブログで紹介してきた通り、料理が大皿で提供されてそれを分けて食べますが、あくまでそれぞれが自分のお皿に取分けて個々で料理を食べるスタイルで、大皿から直接よそってソースをつけながら食べるような、直箸スタイルはありません。バーニャ・カウダはイタリア料理の通常スタイルよりも、むしろ日本のしゃぶしゃぶや鍋料理に似ています。ですから日本人の方が馴染みがある食べ方で、抵抗なくすんなり受け入れやすい料理なのではないかと思いました。味付けにしても、アンチョビの魚の旨みがベースにあるといったところも日本料理に通じます。
バーニャカウダの美味しさを再確認でき大満足した後は、雨が降りしきるイヴレアの街を再び散策しました。
ちょっと休憩に寄ったBARで頂いたのは、これまたピエモンテ州の名物デザートのZabajone(ザバイヨーネ)。ザバイヨーネとは、マルサラワインという甘いデザートワインを加えて煮詰めたカスタードクリームです。温かい飲み物なので、寒い日にはぴったり。洋酒がしっかり効いた大人のデザート。日本にありそうで意外にない味なのですが、とっても美味しいです。すっかり気に入ったので、マルサラワインを買って自宅でも作ってみようと思いました。
ピエモンテ州はイヴレアのみの滞在、この後はフィレンツェに直接帰る予定だったのですが・・・途中通過したジェノバにふらりと寄ることに。予定を組まない自由旅行ならではの展開、そのままジェノバに一泊することにしました。次回はリグーリア州ジェノバについてお伝えします。
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「北イタリアの旅(1)カウントダウンディナーで耐久レース並の過酷さを経験」
「北イタリアの旅(2)お城だらけのロマンチックなヴァッレ・ダオスタ」
Boccon Di vino(ボッコン・ディ・ヴィーノ)
住所: Via Aosta, 47 | Via Aosta, 47, Ivrea, Italia
電話: +39 012548998
URL(トリップアドバイザー): https://www.tripadvisor.it/Restaurant_Review-g194785-d2266006-Reviews-Boccon_Di_Vino-Ivrea_Province_of_Turin_Piedmont.html
きたとしかず says
ほんとうに日本ではバーニャカウダ有名ですよね、20年くらい前までは全く聞かなかったです。
私は予約の取れない店の有名シェフoさんの影響大とみています。当時あの方の出されていた本などに必ず登場していましたから((笑))それ以降居酒屋やカフェ、ファミレスでもこの名前見るようになった気がしますが、、、
アクアパッツァなどもそうですが、イタリア料理の客層、女性に対する日本のマスメディアの影響とかはすごいと思いますよ。お店のメニューなどみるとその多くは女性向けのレシピ本の料理のオンパレードですから。
makoさんが書かれたようにイタリア人のほうがバーニャカウダなど知らないですね。レッコのフォカッチャのほうが知られている気がする・・多分(笑)
各地の地元料理は地元料理として食べられているところがイタリアのいいところだと思います。
トリノ出身の仕事仲間がマンマの味だといってグリル野菜にこのソース(クリーム使ったタイプでした)かけて作ってくれたことがありました。
ザバイオーネ美味しいですよね~
これで元気出せとか温まるぞ~なんていわれて
日本の玉子酒みたいといつも感じます。
Mako says
きたさん、コメントありがとうございます!
バーニャカウダPRは、なんとあの有名シェフが仕掛け人だったんですね!私も銀座店へディナーで訪れましたが、ご本人がいらっしゃらなくてなんとも残念でした。
あのレストランの名前の由来になったらしい(本当かどうかはわかりませんが・・)レストランがフィレンツェにありますが、雰囲気も良く味も良くお勧めのレストランです。
しかし、イタリア人があまりバーニャカウダを知らないのには私も意外でした。まわりのフィレンツェ人は食べたことが無いという人ばかりです。
ザバイオーネ、美味しいですよね~!私もすっかり気に入ったのですが、残念ながらフィレンツェではあまり見かけません。自分でリキュールを買って自作しようかと思ってましたが、今年のイタリアは暖冬なのでいまいち飲みたい気持ちが薄れてしまい、来年こそは!と思ってます。