トスカーナ州フィレンツェ近郊のバーニョ・ア・リーポリにあるレストラン「588」。オリーブ畑が広がる緑豊かな美しい自然に囲まれたこのレストランを手がけている34歳の若きシェフ、アンドレア・ペリーニ(Andrea Perini)は「エキストラヴァージン・オリーブオイルのシェフ」と呼ばれています。右耳に載せた鉛筆(同じ位置に鉛筆のタトゥーも!)がトレードマークのアンドレアは、エキストラヴァージン・オリーブオイルの魔術師です。
イタリア中から届く100以上のオリーブオイル、料理ごとにオイルをセレクト
イタリア料理に欠かせないものといえば、エキストラヴァージン・オリーブオイル(以下オリーブオイルで統一)。多くのシェフにとってオリーブオイルは調味料に過ぎませんが、アンドレアにとっては違います。彼が生み出す芸術のような料理の主役は、オリーブオイルそのものです。
アンドレアのもとにはイタリア全土から100以上のオリーブオイルが届きますが、アンドレアはその中から最高のものを選りすぐって、そのオイルを最高に活かす料理を生み出します。フラントイオ、コラティナ、モライオロなど、オリーブの各品種のそれぞれの特徴にあわせて、各オリーブオイルに最もふさわしい料理を考えることからスタートするのがアンドレアのメニューづくりです。
レストラン「588」のメニューを初めて見る人は驚くと思いますが、というのも全ての料理名の下に、使用しているオリーブオイルの生産者、産地、品種が記載されているのです。例えば「子羊のテリーヌ(ウンブリア州、Giulio Mannelli社、品種モライオーロ)」といった具合に。ここでは食事中にいくつものオリーブオイルを味わい、その違いを楽しむこともできます。
そんなアンドレアをフロス・オレイ(Flos Olei)というイタリアの料理ガイドは「料理のひと皿ごとにエキストラヴァージンオリーブオイルを最も厳格にセレクトして組み合わせるシェフ」と評していますが、アンドレアはこれまでいくつものオリーブオイルに関する賞を受賞しています。
オリーブオイル生産者だった祖父と叔父、幼い頃からオリーブオイルは身近な存在
フィレンツェ出身のアンドレアとってオリーブオイルは幼い頃から身近な存在でした。というのも、祖父と叔父がオリーブオイルの生産者。アンドレアを幼い頃からオリーブオイル生産所へ連れて行っていましたが、アンドレアはいつもオリーブオイルの世界に魅せられていました。
同時にアンドレアが幼い頃から興味を持っていたものは料理でした。4〜5歳頃から友人の家族が経営する近所のレストランの厨房をのぞき見するようになって以来、料理にすっかり夢中になり、成長するに連れ料理への情熱はますます高まっていきました。
「近所のレストランからは香りとフレーバーを区別することを学びました。一方、家では叔母や祖母が料理するパン、トマトソース、ラグー、ローストが私に影響を与えました。食べ物の変形、調理方法、味の組み合わせを考えることは、私にとっては多くのゲームよりもはるかに魅力的だったのです。」とアンドレア。
ロンドンのゴードン・ラムゼイのもとで働いたことは、自身を成長させる経験に
15歳の頃には土日にレストランで働くようになり、フィレンツェの料理学校で学んだ後には迷うこと無く料理の道へと進むことにしました。ピッツェリアやホテルなどを転々とした後、短いスイスでの滞在を経てロンドンの有名シェフ、ゴードン・ラムゼイのもとで働きました。「ゴードン・ラムゼイでの経験は、私を大きく変えました。彼は厨房での厳格さと規律、新しい調理テクニック、私が知らなかった材料を使う料理、慎重に購入することの大切さ、これらのことを教わりました。」
その後、2014年からトスカーナにあるオリーブオイルリゾート「ヴィッラ・カンペストリ(Villa Campestri)」で働き始めてから、アンドレアはオリーブオイルの知識を深めていきます。外国での経験を経て、オリーブオイルは自国で最も重要な素材のひとつであるにも関わらず、グルメレストランでそこまで重要視されていないことに気づき、オリーブオイルの可能性をもっと探りたいと思い始めました。しかし、オリーブオイルに特化した料理を目指すことはたやすいことではありませんでしたが、アンドレアは試行錯誤を重ねていきました。
2016年から現在のレストラン「588」で働き始めますが、「588」が入っているホテル「ボルゴ・イ・ヴィチェッリ(Borgo i Vicelli)」のオーナーのジュリア・フランコ(Giulia Franco)もまたオリーブオイルを生産して販売しているため二人は意気投合し、オリーブオイルを主役にした料理のレストランを目指しました。「588」では、オリーブオイルの香りを高め、風味を維持するために常に生のまま使用されます。
前菜からデザートにいたるまで、オリーブオイルづくしのフルコース
「588」での食事はメニューから好きな単品を選んで組み合わせる他、シェフお任せコースもあります。お任せコースはワイン無しの形式と、各料理にあわせて最高のワインを専属ソムリエがセレクトしてくれるという形式の2パターンがあります。予約制ですが、3つの厳選オリーブオイルを試食するコースも。
オリーブオイルが主役でありながら、オリーブオイルが前面に出すぎず他の食材の良さも引き立てている絶妙のバランス感覚の料理の数々。オリーブオイルのキラキラ輝く黄金色で仕上げられるひと皿は見た目にもアートのような美しさ。
改めてイタリアのオリーブオイルの美味しさも再認識できるディナーでもありました。食後、アンドレアに和食にオリーブオイルは合うか聞いてみたところ、こんな返事がありました。
「イタリア料理以外でオリーブオイルがあうのは日本料理だと思います。日本料理もイタリア料理と同じく素材そのものの味わいを大切にする料理なので、オリーブオイルが合う料理が多いと思います。例えば日本の蒸した野菜料理にオリーブオイルはよく合いますし、日本の出汁にオリーブオイルを垂らしたスープも美味しいです。私は日本の餃子が好きなのですが、餃子とオリーブオイルの組み合わせはかなりイケますよ!」
家庭では一児のパパである子煩悩のアンドレアは、ジョイアと娘のチェレステと暮らしています。間もなく6歳になるチェレステは「パパ、オリーブオイルの試食をして遊びましょう!」と言うのだとか。
食後はヴィッラ・ホテル「ボルゴ・イ・ヴィチェッリ」に宿泊して、イタリアの美しい田舎風景に癒やされて
「588」で食事するなら、このレストランが入っているホテル「ボルゴ・イ・ヴィチェッリ」に泊まるのもお勧めです。アンドレアも「美しいオリーブ畑に囲まれた緑豊かなここのロケーションにすっかり魅せられました。」と話すように、トスカーナの美しい自然の中にあるホテルは、オーナーたちがセレクトしたこだわりのインテリアが魅力です。
アンドレア・ペリーニ(Andrea Perini)
Instagram: https://www.instagram.com/andreaperini_chef/
リストランテ・アル・588(Ristorante al 588)
HP: https://www.ristoranteal588.com
Instagram: https://www.instagram.com/ristoranteal588/
ボルゴ・イ・ヴィチェッリ(Borgo i Vicelli)
HP: https://www.borgoivicelli.com/it/
Instagram: https://www.instagram.com/borgoivicelli/
住所:Via Roma n. 588 – 50012 – Bagno A Ripoli (FI)
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このコラムはイタリア情報サイト「SHOP ITALIA」で掲載になったものです。
【料理の主役はオリーブオイル!“エキストラヴァージンオイルのシェフ”、アンドレア・ペリーニ】
◆「あがるイタリア」&「SHOP ITALIA」のでコラム連載しています。過去の記事もこちらからどうぞ♪
コラム一覧はこちら→ https://shop-italia.jp/author/mako-kobayashi
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